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美しい星のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
3.7
【「裸のランチ」か!
凄すぎる再構築】
三島由紀夫の同名SF小説の映画化と聞いた時、ブンブンは不安になった。三島由紀夫小説の映画化自体難しいのに、アレを映画化するとは?

まず、何が難しいかってというと小説ならでは、三島由紀夫小説ならではの耽美で難解な単語の洪水をどうやって映像で再現するか問題がある。正直内容自体の映画化は問題ない。三島由紀夫はご丁寧にも、映画的物語構成で「美しい星」を書かれていたから。しかし、ボキャブラリー問題。そして、そもそも東西冷戦により世界が本当に滅亡するのではと世の中が不安に駆られていた1962年の厭世さをねじ込んだ此奴を、如何に2017年に持ってくるのか?そこが問題だった。

そして結論から言おう、括弧付きで成功、傑作であった。

テーマは地球温暖化と近年問題視される日本人の他者に対する無関心と、スケール感は矮小せざる得なかったものの、着眼点は鋭い。

家族が覚醒し、各々暴れているのに変化に気づけない程家族の絆が希薄化する。しかし、皮肉にも覚醒が絆の大切さを気づかせてくれる。そのブラックさにのめり込んだ。一見、原作改悪に見えるものも、しっかり観ると上手く原作とシンクロしている。吉田大八監督の手腕に圧倒されました。まるで、クローネンバーグの「裸のランチ」を観たような興奮がありました。


駄菓子菓子!
「裸のランチ」とは違い、本作は原作読んでないと正直退屈する作品であることは否めない。見かけ倒しの映画の域を出てない。劣化版「裸のランチ」といえる。

とはいえ、私は吉田大八監督の「美しい星」は好きです。誰かと話したい逸品でした。
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