aki

さよなら、ぼくのモンスターのakiのレビュー・感想・評価

3.5
親という呪いと、生まれ持ったセクシャリティという呪いと、なりたい自分に届かない自分にもがく男の子のお話。

映像がきれい、特にオスカーとワイルダーのキスシーンは、ジェマとのキスとは比較にならないほどの神秘的な輝きがあって、とても良かった。音楽もおしゃれだし、洋画にちょいちょい出てくるツリーハウス、あれほんとに憧れる。私も欲しい。

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以下多少のネタバレありかもです。

イマジナリーフレンド、という自分にしか見えない空想の友達を持つことは、幼少期珍しくないんだそうだ。いまさらっとwikiを見てみたら、大人になっても存在する場合もある、らしい。
先日観た「勝手にふるえてろ」の主人公も、妄想の中で街中の人たちと会話を繰り広げてたけど、あれもそのひとつなんだろうな。
かく言う私もその気はある。私は家族との仲は良好で大抵なんでも話せるし、気の置けない友人もありがたいことに何人もいてくれるが、恋愛ごとで泣くときなどは家族や友人より高校生の時に買ったくまのプーに聞いてもらうことの方が多かった。 プーは別に何も言ってはくれないが、じっとこっちを見て私の悲しみと涙を吸収してくれるから、それだけでなんだか救われた。家が火事になったら持ち出したいものランキング、かなり上位にいる。
この妄想の内実はただ、自らの思考の片割れを誰かに見立てているだけなんだけど、目と鼻と口がある「誰か」が(たとえそれがハムスターやプーであっても)その役割を担ってくれているだけでちょっと心強くなるから不思議だ。

オスカーの場合、その役割はハムスターのバフィー🐹が担っていて、10年もの長い間彼女(雄だったらしいけど)はオスカーを支え続ける。夢に向かって努力する姿、家族に悩む姿、初めての恋に苦しむ姿。全部が上手くいかないようで、僕には何もない、自分は空っぽだと思えてしまうオスカーだけど、オスカーが本当は気づいてるいろんなことも、バフィーは最後に教えてくれる。

5匹目がいなくても、お父さんが夢を作ってくれなくても、クソみたいな人生を強く生きていけるかしら。いけるかもね。

かわいい青春映画でした。
aki

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