このレビューはネタバレを含みます
今泉力哉監督は「好きってなんだ」を問い続けてる監督というイメージなんだけど、今作もあらゆる「好き」の博覧会だった。
全編通して静かな会話劇、主演の稲垣吾郎さん中心に淡々と進んでいるのに見えてくるそれぞれの「好き」のかたちや大きさ、色合い、濃淡。
多少の恋愛を経て現在結婚している身としては、10代の彼氏彼女、不倫中の奥さん、本気になってしまった不倫相手、それを知った夫、だめだよねと言いつつ不倫がやめられない女の子、夫の不倫を知りつつ嫌いになれない妻、それぞれの気持ちが(実際に経験してるかは別として)どれも少しずつ「うぐぅぅぅぅなんとなくわかる」、と思えてしまって、心が遠心力でぐわんぐわんしていた。
(若葉竜也くん演じるマサだけは「おいお前」と思いながら見ていたが笑)
中盤出てくる志田未来ちゃんの「おい私は全部知ってるぞ」顔、その後の稲垣吾郎の「僕これどういう顔をしたらいいんですか」顔にめっちゃ笑った。エンドレスリピートの「あの日の悲しみ〜さえ」も静かにすごい笑ってた。
夫婦の対話のシーンでは涙し、その後中村ゆりさん演じる紗衣が実家で母のアルバムを見るシーンでも涙した。好きだけど家族で、家族になると薄れる何かもあるけど、自分の大切なものを一緒に大事にしてくれるということで表わされる好きもあるんだよな。届くかどうかは別として。
稲垣吾郎さんに当て書きしたというだけあって、「妻の不倫を知っても悲しみもショックも受けなかった」という茂巳の役を、稲垣吾郎さんがすごい説得力を持って演じていた。演じてというか、本当にこういう人なのではと思わされた。冷たい人でもおかしな人でもなく、何かが欠落しているでも嫌なやつでもなく、それどころか物腰柔らかで優しくてチャーミングで、ただ、本当にただそういう人で、実際にそうだったんだなと思わせてくれた。
稲垣吾郎作品て正直あんまり思い浮かばないんですが、これ、代表作でいいんじゃないでしょうか。
初めてを映画館で観れて良かった。次回はお休みの日の午後とかに、だらだらっとしながら、また観たい。
