認知症の祖父と7年近く一緒に暮らしていたので、つらい…つらい…と思いながら観ていた。
幸い私の祖父はたぶんもっとも穏やかなタイプで、辻褄が合わないことや自分の知らない(と思ってる)ことに直面しても「ほぅ、そうだったかいな？はっはっは」と受け止めていたように見えていたけど、この映画で描かれるような混乱はたくさんあったと思う。
序盤、同じ部屋にいる人間に「お前は誰だ？」と聞いて答えを聞いている間の、答えを聞いてもそれが何を意味してるのかわからないあの顔が完全に祖父とオーバーラップして、その後しばらくアンソニーホプキンスが祖父に見えるほどだった。(祖父も洋風な顔立ちだったし、もしかしたら本当に似てるんじゃと思って昔の画像検索したら全然似てなかった、役者さんてすごい。)
認知症の人間の視点から描くことで、本人の混乱を観客側にも体験させ同じ混乱と不安を味わわせるという構造に、アンソニーホプキンスの演技とももはや思えないリアリティが乗っかって、終盤は胸が押しつぶされそうだった。
この年のアカデミー賞候補作品、他にたぶん何も見れてないけど、このアンソニーホプキンスが主演男優賞が取らなきゃ誰が取ると思わされる、圧巻の演技でした。
