JAmmyWAng

メットガラ ドレスをまとった美術館のJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

4.8
企画展『鏡の中の中国』における「西洋と東洋」の終わりなき対話をテーマに据えながら、セレブを媒介として「ハイ・ファッションと大衆」がリンクする一大イベント『メットガラ』を具象化していくワケなんだけど、その熾烈な過程における多層的な衝突や軋轢によって、「商業と芸術」の両極における剥き出しのスリルと金言に終始溢れかえっているヤバいヤツ。

様々な苦難に揉まれながらも、開催へと辿り着いたメットガラのレッドカーペット上では、セレブがセレブである由縁をファッションが強烈に証明しているという途轍もなく煌びやかな景色が広がっていて、あまりの輝きに言葉を失ってしまったと言いますかもう最高に2017SSブチ上げーしょん☆

一方で、「西洋と東洋」におけるエドワード・サイード的なオリエント問題、つまり「外的な主体から押し付けられた固有性によって、現在的な多様性を無視して勝手に構成された表象のイメージとしての中国」という問題に対する、美術展における表現としての回答が映し出されていないのは残念ではあるかなあと。

しかしながら「幻想としての中国に魅了される」と無邪気に語っているジョン・ガリアーノには、究極のチャイナ幻想である超絶大傑作『ゴーストハンターズ』を撮ったジョン・カーペンター先生が重なって見えたし、めちゃくちゃおこがましいけれども昔のカンフー映画に一喜一憂している自分自身をも見たような気がするのです。

そのようにオリエンタリズム的には「固定化された幻想も良いじゃん」派と「現代の多様性をちゃんと見て」派があって、またファッションで言えばキュレーターのアンドリュー・ボルトンのように「ファッションはアートだよ」派もいれば、カール・ラガーフェルドや川久保玲のように「ファッションは芸術じゃないよ」派もいるのですから、2017AWのトレンドは早くも「ややこしい」に決定したというワケです。
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