備忘のために
これは出色の出来。イタリア版DVDで視聴したけど、ブルーレイで見たかったところ。タヴィアーニ兄弟の最高傑作のひとつ。だんぜんそう。
ボッカッチョの原作との違いを比べるのも楽しいだろうけど、ぼくは冒頭のペストに冒された若者を、灰色の空に見上げるショットからもう、タヴィアーニ的世界にすっと入ってゆけた。美しくグロテスク。毒々しさの手前にとどまる色艶やかさ。透明な呼吸する肌の白。すきとおる瞳が瞬き。
セリフは必要最低限、音楽はロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニらの古典からの引用とオリジナル、編集はタヴィアーニ兄弟には欠かせないロベルト・ペルピンニャーニ。
キャストも豪華。トロイージの盟友レッロ・アレーナの演じるタンクレディはコミカルにしてグロテスク。大好きなジャスミン・トリンカは少々歳をとったけれど、それでもあの魅力はたまりません。やんちゃ坊主のリッカルド・スカマルチョのチョイとばかりキモい男の役も悪くはなかったし、なんといってもキム・ロッシ・ステュワートのカランドリーノ役は大いに楽しめた。
そしてなんといっても語り手の若者たちの初々しさとトスカーナの風景。人の手が入っているからこその美しさを、タヴィアーニ兄弟は、それこそ映画を撮りながら再発見してゆくのだけど、いやはやそれがまたじつに美しいのだ。これぞまさに映画ならではの美しさってやつだなと、なんだかすごく納得できるじゃないですか。
いやほんと、最高。日本でも、ぜひぜひブルーレイを発売してほしいところ。買いますから。
