幽斎

インビテーション/不吉な招待状の幽斎のレビュー・感想・評価

5.0
スリラーに文系と理数系が有るとしたら、本作はどっぷり文系と言える。因みに理数系の代表作は「SAW」ですね、先般レビューした「インビジブル・ゲスト」もそうです。文系のスリラーとは一般的に不条理スリラーとも呼ばれ、近作だと「GET OUT」がそうですが、雰囲気重視のミステリー故に見る側にも想像力が必要なので、「さぁて、明日は休みなのでビール片手にレンタルでも見るか」的な感じだと「なんじゃ、こりぁ」と為る事必須、そういう時はSteven Seagalがお薦めです(褒めてます)。

セリフの一つ一つに意味の有る理数系と違い、ビジュアルと音楽で不穏な雰囲気を如何に醸し出すか、それを見る側に若干神経を逆なでさせながら、どう興味を繋いでいくのかと言う点ではとても良く出来ていると思います。Karyn Kusamaは函館にルーツを持つ日系の監督で、主にTVで映画では職人監督的な感じでしたが本作で注目に値すると言える。

主人公を含め全員が胡散臭いのだが、見ている側が秀逸な演出によって、まるでパーティに参加して居るかの様な没入感があり、ディスプレイに向かって主人公の肩を叩いて「一緒に此処を出ようぜ!」と言いたくなる程、特に前半はまったりし過ぎな感は否めませんが、中枢神経を刺激するような不安感が妙にハマって物語から脱落させない演出は見事です。

この作品の評価が低いのは、そうやって我慢(表現が適切かどうか分りませんが)した後で「そうか、そういう事だったのか!」と言ったオチへの爽快感が皆無だと言う事です。最後に膝を打って「なるほど!」と成るのが理数系なら、此方は本当のラストは観客に委ねられているのです。其処を敢えて見せず暗示させて終わる所が賛否の分れる所以です。私的には映像で充分租借できたと思っているし、冒頭のある出来事も立派な伏線だと思うのですが、想像の斜め上と思しきラストを見せてしまうと、これはスリラーでは無く単なるホラーに過ぎないと思うのです。

こういった映画は大凡変態映画と呼べるものが多く、本作も品の良い変態映画で有る事に間違いありません。ですが物語の中で語られた様々な暗示が、ラストに向かって収斂されて一点に絞られた時、其処に浮かび上がる真相(深層)は紛れもなくスリラーです。コンビニの安いヤツで構いませんので、是非ワインと共にお楽しみください。きっと、ザワッとした肌触りがお楽しみ頂けると思います。お薦めです。
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