うえびん

Viva!公務員/公務員はどこへ行く?/オレはどこへ行く?のうえびんのレビュー・感想・評価

3.8
公務員はつらいよ

2017年 イタリア作品

祖父→父→子
代々受け継いできた公務員という仕事。主人公ケッコも子どもの頃からの夢は公務員。夢を果たして公務員になって悠々自適の毎日を過ごしていた38歳のケッコが、政府の方針で人員削減の対象になる。

リストラ担当のシローニ部長は、1244名のリストラを命じられ、1243名を断行するが、あくまで「安定して優遇されている」公務員の立場を手放さないケッコ。シローニ対ケッコ、リストラ対決がいろんな場所で繰り広げられるのが面白い。

バーリ県コンヴェルサーノ → ローマ → ピエモンテ州スーザ → サルディーニャ島のヌーオロ → イタリア最南端のランペドゥーサ島、段々と、お次はどこ?と楽しみになってきたところで…。

→ 北極の観測所ニーオーレスン

さすがのケッコもめげそうになるけれど、ヴァレリアとの出会いで極地での生活にも馴染んでゆく。一面の銀世界と動物たち、景色がきれいで、ケッコとヴァレリアの掛け合いが、極寒の極地を感じさせない。

ヴァレリアの住まい、ノルウェーのベルゲンでは、イタリアと北欧の国民性の違いが誇張して描かれていて面白い。その後も、ケッコは各地を転々としますが、ネタバレになるのでここまで。ケッコの公務と人生の旅は、最期まで笑って楽しめる。

国別の公務員の数が気になってみて調べてみた。OECDの公開値によると、日本は2019年時点で5.9%で、雇用者全体のおよそ1/17が公務員。OECD諸国では最低率。OECDの平均値は2019年時点で17.9%なので、それと比べると約1/3となっている。イタリアは13.2%だ。

イタリアでは2014年地方自治改革(デルリオ法)によって、従来の州県市の三重構造を廃止、県議会の直接選挙が廃止されるなどして、県の権限が大幅に縮小された。このあたりの事情が本作にも反映されているよう。

祖国愛、公務への誇り、公務員という職業に対しての執着、そして家族愛。風変わりで情に厚いケッコ。キャラが立ってるので、寅さんみたいにシリーズ化してほしい。
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