このレビューはネタバレを含みます
オチが染み渡った。
それまでのじとーっとしたカットは、オチに向けて心をデトックスするための助走のようなもの。
彼らと同じ目線になって、車に乗り、風景を楽しみ、言葉も少なく、カットの空白に興じる。
自分がイメージするカットの切り替えのタイミングの倍かそれ以上の長さで尺があてられ、人がフレームから外れた後の空間にも余韻を映していた。
感性を意図的に刺激するような映像。思考がめぐり、なにかを感じ取ろうと五感が走る。
あくびが出るほどテンポがのろく、展開らしい展開がない。ロードムービーというには冒険がなく、無口な旅行番組のような仕上がり。思わず眠りかけていた所を、男の大きな声に起こされた。
はじめはカット一つ一つに情報を期待していたが、どちらかといえば情報を与えるカットではなく、景色を楽しみ、同じ時間を過ごす、そういう形での映画への入り方、時間経過の楽しみかたを求める作品なのかなと思った。感覚的に溶け込む作品。
語られない二人の本音が、景色ににじみ、無言の間に、表情にとけだしていた。
古びると言うこと。言葉と人の姿がダブって見えた。
テンポの良い映画が個人的には好きだが、あまりそのあたりは考えてこなかった。撮影や編集の効率、仕上がり的にも短いカットが主流だと思うが、本作を見てそうしたカットのテンポを考える機会をもらった。映画を見る幅が広がった気がした。
極端なもの、に触れる経験は自分の振り幅を広げる意味でも、刺激と言う意味でも貴重だ。