最近『ファースト・カウ』が話題のケリー・ライカート監督作品。
また、U-NEXTでも少し前から同監督の特集が組まれていて本作も見放題に。
事前に「作品中で何も起きないよ」と聞いていたものの、想像をはるかに上回る「何も起きない具合」だった笑
第一子が生まれる間近のおっさんが、旧友のおっさんから声をかけられ、車で山中の温泉を訪ね、一緒に温泉に入り、帰ってきて、別れる。それだけの話。途中で起きるアクシデントは「ちょっと道に迷う」という地味な出来事のみ。
ということで「めっちゃ面白い!」みたいなテンションにはどうしてもならないのだけれど、他作品が切り取らない角度で人生の一側面を切り取っていることから、本作にしか描き得ないものを描いているのも確か。
私も本作のように、年に1回程度しか会わない(でも年に1回程度は必ず会う)友人がいるんだけれど、どうしても彼との関係性を思い出した。
彼も同級生につき本作同様「おっさん・ミーツ・おっさん」となるのだが、久しぶりに会ったことによる関係性の若干の調整は冒頭10分程度で終わり、後は、昨日まで毎日会っていたかのような昔ながらの関係性に戻る。
そして積もる話を解消し、例年お決まりの「オールド・ジョイ」な話をしたりしながらも、時間になれば、明日もまた会うかのような素っ気なさで別れる。
なんとなく、死ぬまでこういう挙動が続いていきそうな気がしているし、それってなんか、うまく言えないけれど、「これこそが人生」って感じもする。
まさに『オールド・ジョイ』で描かれた二人の関係性に近いと思うが、本作で少し異なるのが、カートが道中、2人の関係性に対する不安を口にすることか。
私と友人は、この関係性がずっと続いていくのだろうと思っているのに対し、カートは、この関係性は長くは続かないのではないかと不安に思っている。
うん、そういう風に、静かに終わっていった関係性は、確かに自分にもあった。分かる。
ただ、カートがそれを口にしたとて、二人の関係性が大きく変わることはない。
別れ際の究極的なまでの呆気なさと素っ気なさ。
結局、全ては日常に絡め取られ、埋没していくだけであるし、これは決してネガティブな意味合いではない。
そう、やはり、「これこそが人生」なんだ。
そう考えると、人生というものの切り取り方において、本作のオリジナリティーは高い。
他作品でも同じような感傷を味わえるのだろうか。期待したい。