予告編がめちゃくちゃ不気味で良かったのと、ポスターアートの素晴らしさから、「これは久々に特大ヒットのJ-ホラー登場か!?」と大きな期待のもと鑑賞。
まず、予告編で確認できたJ-ホラー演出、これはなかなかに素晴らしかった。
ジャンプスケアに頼ることなく、「ただそこにそれが存在することの恐怖」を描けていたのは非常にポイント高し。
しかも、霊的な存在に頼るでもなく、「違和感」や「不穏さ」といった抽象的な要素を映像として具現化する手腕、下津監督、やりよるです。
と、ホラー演出は非常に良かったんだけど、肝心の物語のほうがですね、ちょっとダメダメ過ぎる。
はっきり言って「ちゃんとしてねぇ」。
とにかく、色々なところに「不整合」があり過ぎて、純粋に観ていてノイズとして感じちゃう。
これ、「不条理ホラー」として誤解されそうなんだけれど、そういんとは違うのよね。
不条理ってのは「自分が今持っているコンテクストでは読み解けないこと」であって、自分の理解の範疇外にはなんらかの道理がある(又は「あるのでは」と思わせてくれる)もの。
本作に於いてはそういうのではなく、純粋に「いや行動原理一貫してませんやん」とか「さっきの事柄と矛盾してますやん」とか、そういうの多し。
こういうの、純粋に脚本の練り込み不足にしか見えず、テンション下がる。
これ、最近の清水崇監督作品に色濃く観られる特徴で、本作も総合プロデューサーとして彼が色々口出ししちゃったのかな、なんて思っていたら、下津監督は清水Pの助言をほぼフル無視する形で本作を制作したとのこと。
どういうことやねん。
例えば本作後半、家から「例の存在」が不在となった後、家族が「あなたのせいで●●なことが起っちゃうよ」と主人公に迫って来るが、そこには切迫感が皆無。
もっと必死で働きかけたり、自分らで早急に代替探したりなぜしないの?って思っちゃう。こういうことが数多ある。
ということで、お話としての満足度はかなり低い。
ま、ホラー映画につき、「ちゃんと怖いホラー表現を観ることが出来た」というだけでもそれなりに観る価値はあったものと思料。