いちごあんこ

しゃぼん玉のいちごあんこのネタバレレビュー・内容・結末

しゃぼん玉(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

■ざっくりストーリー
ひったくりなどの犯罪を繰り返して逃亡していた青年いずみは、山中でおばあさんを助ける。
舞台は自然豊かな宮崎県椎葉村。
罪を隠して椎葉村のおばあさんの家で過ごす。
山仕事や祭りの手伝いをしていく中で村の人たちの温かさに触れ、いずみは徐々に心が変わっていく。
椎葉平家まつりの背景と重ね合わせたストーリー。

▼補足「椎葉平家まつりの由来」
椎葉村は、源氏に敗れた平家の残党が辿り着いた隠れ里だった。
椎葉村の伝統行事である椎葉平家まつりは、平家・鶴富姫と源氏・那須大八郎の悲しい恋物語を再現し偲ぶ行事。
隠れ里を知った源氏は逃げた平家に追い討ちをかけようと椎葉村にたどり着くも、ひっそりと農耕をする姿を目にして哀れに思い追討を断念。
大八郎は鎌倉に戻らず、この椎葉村で農耕など協力し合いながら暮らした。
そんな中で鶴富姫と出会い恋をするが、幕府から帰還を命じられ、生き別れとなる。

■感想
まず、かなり自分好みの作風だった。
セリフやBGMは最小限。
特にいずみ(林遣都)は表情や仕草だけで表現しているシーンが非常に多く、喋ってる部分をキュッとまとめたらほんの数分程度だろう。
伏線も散りばめられていて、静かでゆっくりとした雰囲気に反して無駄がない感じがした。
村の人たちの訛りがキツくて一回で聞き取れなかった部分が実はあとあと重要なセリフだったりもした…。
映像はあえて引き画を引っ張ってのどかな風景の中に人がいるというような画が自分好みで良かった。
他の映画だったらこのシーンもっと泣かせるための演出するよなと思う場面が多々あるくらい、人工的な演出はなく自然でリアルだった。

ストーリーは、椎葉平家まつりの由来である、
大八郎&鶴富姫の背景と
いずみ&みちの背景の重ね合わせが痺れた。
いずみ:犯罪に手を染め、大阪でみちを殺そうとするが、村の人々と助け合って暮らし始める
(大八郎:平家を殺すために椎葉村にやってくるが村の人々と助け合って暮らし始める)
みち:通り魔から逃げて椎葉村に戻ってきた
(鶴富姫:源氏から逃げて椎葉村に辿り着いた)

おばあちゃんは、いずみの名前も聞かず「坊」と呼び優しくした。
「坊は良い子だ」といずみを優しく包み込む様子が、本当は甘いのにトゲの痛いイガグリを包み込むよう。。
一度犯罪に手を染めたらなかなか抜け出せないたのだろうか、いずみは何度もおばあちゃんの家を物色する。
親の愛を知らないいずみは、おばあちゃんの優しさに戸惑いながらも、頑固おやじのシゲ爺の手伝いをしたり、10年ぶりに故郷に帰ってきたみちと祭りの準備をしたりと村の人々と助け合って暮らした。
みちが村に戻ってきた理由(大阪で通り魔に遭う=自分が犯人)を聞き、いずみは自分の犯した罪の重さに気付く。
ある日、突然おばあちゃんの家に金を無心しに来たのは、生き別れたいずみの父(おばあちゃんの息子)だった。
ずっと離れて暮らしていたが、父といずみの金を欲しがるその姿は同じようだった。
いずみは父だと気付くが、父はいずみを子だと気付かない。
父はいずみを本気で殺そうとする。その時運良くシゲ爺が来てことなきを得る。
父は、おばあちゃん(母)に対してなかなか帰ってこれないと言うが、もう帰る気はなかった。
それに対して、自身の犯罪をおばあちゃんに明かしたいずみは「何年先になるかわからないけどまたここに帰ってきたい」と言った。
おばあちゃんは驚く顔も見せず、「坊は良い子だとばあちゃんが良く知ってる。償っておいで」と優しく肩を叩いた。

3年後にいずみは村に戻ってきた。
ひとり暮らしのおばあちゃの家には灯りがついていた。

■セリフ
「お前は逃げることばっかり考えてる。
いい加減自分から向かっていく力を付けないといけない。
今から逃げてたら残りの人生どうするのか。」

「しゃぼん玉みたいなもんかな。
風に吹かれてフラフラしてるだけ。
自由じゃない、帰る場所がないだけ。」

「いろいろあるけど、またやり直そうって思える。
いざとなったらまたここに戻ってくればいい。この年で人生諦めるって悔しいじゃない?勿体無いって思う。」

ストーリー :★★★★★
演   出 :★★★★★
関 心 度 :★★★★★
メッセージ性:★★★★★