annnouimo

マンチェスター・バイ・ザ・シーのannnouimoのレビュー・感想・評価

4.1
全体のスコア平均3.9(2018年2月時点)って意外。

だって、つまらなくないですか?
ダラダラした長回し。話題も地味。
酷評する人も多いのでは? 途中で観るのをやめると思う。

それでも意外に高評価なのは、人の死後、遺された親族のリアルな描写に共感した人も多かったのかもしれません。

私はまず、母が死んだ時の叔父と、その17年後に父が死んだ時の叔父を思い出した。
どちらの時もとてもお世話になった父の弟。甥姪に過剰な気遣いはなかった所と口の悪さがリーに似てる。

映画が進むと、今度は母が死んだ時の父を思い出した。
この作品に終始漂っている寄る辺なさは、あの頃の父が醸していた空気に似ている。

人が死んでも、いくら近しい家族であっても悲しみに暮れるわけではなく、それぞれの生活を進めなければならない。
家族よりも周囲の方が腫れ物的に気を遣いまくってるところが、すごくリアルだ。ありがたい面もあり、余計な面もある。

甥っ子がリア充でモテまくりなのは救いだ。チャラいけど、16歳にしてはとてもしっかりしてる。いいお父さんだったことが伺える。
あとは、友人のジョージ夫妻がめちゃいい人なのが神レベルで救い。この人いなければヤバかった。

リーは、不幸な男だよ。
でも、甥っ子同様モテるみたいで、イケメンの家系なのか?
特別悪いことはしてなかったと思うけど、結婚生活はうまくいかず、不幸のどん底も味わい、喧嘩っ早いし…
もし、リーが身近にいたら抱きしめてあげたい。よしよしって頭を撫でてあげたい。


この映画には、辛さをどう乗り越えるかの答えはない。
だから、観る人によってはイライラすると思う。

だけど、ダラダラ生きてるように見えて、もがいている。苦しんでいる。
普通の生活は続くから、表面的にはわからない。

私にはリアル過ぎて「あるある」って笑える部分もあった。
そして泣いた。

どこにも行き着けないあの気分は、長回しだから表現できてると思う。波間に漂う小舟のような気分。
よくこんな話を映画にしたなと思うけど、この映像表現があったから成り立ってる。すばらしい表現力だと思う。制作チームメンバーがこの空気を理解し共有できたことが、同じく作り手の立場から見て奇跡だと思う。
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