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TENET テネットのannnouimoのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.7
※個人的事情により辛口です。複数回見た人すみませんm(_ _)m

難解という触れ込みで見始めるも、そんなに難しいですか??という感想。
序盤で研究所みたいなところの人が言ってたじゃないですか。「考えるな。感じろ」的なこと。
この言葉通り、あまり考えずに観ることがポイントかと思います。

時系列で何がどうなって、というところは私も全く理解してないですが、言いたいこと、映画の主題についてはわりと早い段階でわかりました。ストーリーが進んで最後にきっちりネタバレしてますが、なんのひねりもないやんけーーーって思うくらい王道な結末。非常に癖のない素直なテーマ。

みんなが難しい!って騒いでいるのは、時系列だと思うんだけど、うーーーん、、、ぶっちゃけ知る必要ないと思う。。。知りたくなるもんなのかな。私は二度はいいかな…どうしても時系列を紐解きたい人が複数回観てるのだろうと思う。
恐らく脚本上は一応辻褄合うように作ってると思います。そこの紐解きがマニア心をくすぐるのかな。
ただ紐解いたところでそこまで深い何かがあるかは疑問だし、どう考えたって逆行というのはムリがあって、必ずどこかで破綻するわけで。だからこそ「考えるな、感じろ」なわけです。逆行は概念なのです。

この考え方は私が卒論で書いた村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に似ています。設定とかはだいぶ違うけど、結局は自分が巻き起こしていること、というのは似ています。テネットは時間の逆行、世界の終わりでは時間を細分化していくことで表現されています。

いろいろ鍵握ってそうなニール君も、早い段階で「この子妖精的存在でしょ?」と思ったので、この映画は意外とちゃんと重要なこと最初に言ってある親切設計なんですよね。これだけの難解さをまとめあげた、とてもよく練られた脚本。清々しいほどにネタバレしてるんだもの序盤から。主題そのものではなく、それを取り巻くモチーフやディテールが映画で表現したかったことなんだろうな。

という具合にわかったような気になっている私ですが、一応これはなんだろなと思ったこともあるため、以下書きます。あまり考え込むべきではないけれども、各種ディテールは考察しがいのある映画ではあります。

▼主人公について
ボンベイの女武器商人に「主人公は誰」みたいなことを終始問いかけます。ラストは主人公は自分であることを確信。これは物語の意味を読み解く上で重要なセリフであり、上述『世界の終わりと…』によく似てます。加えて名前も明かされないまま。この人、序盤の線路のシーンでは歯を抜かれて死ねなかったはずなのに、歯を治したみたいなこと最初のほうで言っていて…
物語の始まり自体がどこなのか、この人は一体誰なのかわからないようにできています。エッシャーのだまし絵みたい。
それにしてもこの人、さわやかでいて色気がある。スーツが様になってないと言われてたけど、すごく育ちが良さそうな気がしました。

▼ニール君
この人も最初から意味深なこといっぱい言う。「起きてしまったことは仕方ない」なんだか諦めモードのやれやれ感が伝わってきますけど…
最後まで見るとその意味もわかる感じになってます。
個人的には、絵画保管場所の逆行乱闘シーン(謎の人物が誰なのかすぐわかっちゃいましたが…)で「もう一人は殺した」みたいな嘘をついたところが地味に好きです。

▼高身長美女ヒロイン
この綺麗な人、めちゃくちゃ背高いですよね。180はゆうに超えてそうな。

▼セイター氏
この人、私利私欲にまみれた悪役なのかなと思いきや、そうなっちゃったのにも理由がある…?

▼ゴヤの贋作と不倫の話
ゴヤの贋作を描いたなんとか氏と長身美女が不倫してる噂があって…というのが、セイター氏が妻をないがしろにしてる理由?
ゴヤの贋作は「意味のあるニセモノ」という主人公のセリフがあって、なんか意味深だなぁと思いました。これも主題の一つかな。どれが本物かわかんない的な。そもそも本物と偽物を区別する意味ありませんよね的な。
贋作画家のなんとか氏は姿を表さないのだけど、『桐島部活やめるってよ』みたいだなと思いました。実体のないものに皆が踊らされてる感。

▼息子
セイター氏と長身美女の息子くん。顔も見せないし、あまり登場しないけど、彼らにとってかなり重要な存在なのが気になりました。「息子は私の生きる意味そのもの」みたいなこと美女が言ってたり、セイター氏も「唯一の後悔(汚点?だったかな)は息子をもうけたこと」と言ったり(そう言いつつ息子は可愛がってるふう)、そりゃ息子は大事だろうが必要以上の意味を付与されていたように感じました。
プルトニウムだとかアルゴリズムとかは未来のために守られなきゃいけないものっぽいこと言ってた気がするけど、息子そのものもそういう存在なのかなと思った。時間の逆行の枠の外にいる人。あるいはその鍵を握る人。世界(自分たちの無限地獄)を救う人。
実はセイター氏の子じゃなくて、不倫相手の子なのかな?とか思ったり。
この息子にはいろいろ意味がありそう。

▼で、結局この人達って何?
各登場人物は素性が謎。年齢とか時代もわからない。本当に同じ時代を生きている人達なの?
この出来事にどの順番で関わってきてるの?
そして、逆行何度も重ねてる間にどんどん人死んでってるんですけど…。辻褄合わなくならない!?未来が変わってしまわない?
要するに、みんなどこかで死んじゃった人なのかなと思いました。(ざっくり)
死んだあとも魂が過去により戻ってるかのような。
これって、主人公の項にも書きました「主人公は誰なの問題」にも関係するのですが、「主人公が移り変わっていく物語」でもあるんじゃないかな。逆行を繰り返す内、多分真実がねじれるのだと思います。もしかしたら、贋作画家のなんとか氏も過去の当事者の名残みたいな人なのかもね。
つまるところ、探して奔走するプルトニウムとかも、そういういろんな人達がいろいろこじらせた負の遺産みたいなものだと思います。後述します。

▼プルトニウムとかアルゴリズムとか
とりあえず、物語を進めさせる役割かなぁ…と思いました。ドラゴンボール的存在。RPGだと主人公が探しに行く何かよ。でも重要なのはその過程、冒険なわけで。
息子の項でも書きましたが、こうした物質(アルゴリズムは物質じゃないけど)があることで破滅を招いたり、みんなが振り回されているように見えました。世界が終わる!大変だー!って言ってるけど、「大切なもの」というより「なんの役に立つのかわからないけど面倒な厄介物」の印象を受けました。
映画そのものも、視聴者が様々なモチーフや時間の流れに惑わされていて、あんまりそれは重要ではないけど、みんなそういうことが生きる意味とかになっちゃってない?という作者の壮大なメッセージ、象徴、さらにはアイロニーであると捉えました。

▼合言葉?
「宵越しの金は持たない」的なやつ、言ってましたよね。え?全然違う?笑
あれ、いつ決めたんよ?って思った。それっぽい話するシーンがどこかにあったけどさ。この合言葉の起源だけは気になってる。見ることのなかったベトナムの夕暮れが関係してるのかな。

▼まとめ
「時間」「自我」を観念として考えられない人は、延々と弄ばれてしまう映画


で、映画の内容とは全く関係ありませんが、
この映画が原因で、ある人とケンカになりました。。
そんな個人的事情も踏まえて、壮大な振り回し映画だと思っています。

私はもう、二度目はいいや。
時間を逆行してケンカは阻止したいけどね。
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