ノラネコの呑んで観るシネマ

見栄を張るのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

見栄を張る(2016年製作の映画)
4.3
愛すべき小品。
自信喪失状態のアラサーの売れない女優・絵梨子が、姉の突然の死をきっかけに故郷へと帰る。
姉が葬式で泣く弔問客を演じる、いわゆる「泣き屋」だったことを知った絵梨子は、自分も出来ると立候補するも、泣き屋の仕事の本質を理解出来ず、散々な結果に。
葬式を賑やかして見栄を張ること、「私は東京の女優よ」と見栄を張ること、どちらも本質を外れている。
この映画に描かれる泣き屋は、とにかく泣けば良いと言うわけではない。
弔いの演出家で導き手であり、いわば感情移入の動線。
ゆえに、役割になり切らなければ嘘になる。
こじらせ気味の絵梨子は、泣き屋の本質を学ぶことで自己閉塞を打破し、周りの人々の心を理解し、同時に演じることへの大きなヒントを掴む。
長田勇市が和歌山の情景を実に映画的にフレーミングし、久保陽香が絵梨子を繊細に演じる。
藤村明世の演出は成長の余地を残すが、心に残る良いデビュー作だ。
斎藤工監督の「Blank13」にも泣き屋が出て来たが、これ今の日本にも実際にあるんだろうか。
孤独に死ぬ人が増えてるし、この映画が描く弔いの形、弔いの意味はとても現在性があると思う。
あのおばあちゃんのお葬式はとても印象深い。
監督の話だと、若い男の子たちの感想が辛辣らしいけど、中年のおっさんとしては、絵梨子にもおばあちゃんにも思いっきり感情移入したよ。
男は精神年齢低いから、ある程度挫折を知らないと分からない映画なのかも。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1124.html