ハナカズキ

ウインド・リバーのハナカズキのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.3
以前mokemokeさんのレビューを拝読し、すでに半年ほど経ちましたがようやく鑑賞しました。「すごく良かった!」とシンプルですが率直な感想をまずはお伝えしたいです。

物語の舞台はワイオミング州にあるネイティブ・アメリカンの保留地、ウインド・リバー。このウィンド・リバーでネイティブ・アメリカンの少女、ナタリーの死体が見つかりました。発見したのはハンターのコリー。

人が亡くなったとなれば大事件なのに、派遣されたFBIは薄着で到着。この極寒の地で捜査する気がないのが見え見えです。彼とそのFBI、そして地元警官が事件を追っていきます。

ナタリーの亡くなった状況ですが、その夜は気温マイナス30度。そんな極寒の中、薄着でしかも裸足で走っていたことが明らかになります。暴行の跡があり、殺人の可能性がぬぐい切れませんが、死因は冷気を吸ったことによる肺の出血と窒息死であり他殺とは断定されませんでした。

一体ナタリーに何があったのか。

ナタリーの死の真実に迫るサスペンスとしても、それだけで十分に面白い。観客の心をぐっと捉えて離さず、そしてネイティブ・アメリカンの置かれた状況、アメリカの闇を私たちに提示します。

先ほども書きましたが、物語の舞台となったのはネイティブ・アメリカンの保留地ウィンド・リバー。極寒の地域で春でも深い雪に覆われ、静寂が漂う山岳地帯です。

映画内では特に説明はありませんし、事件とは直接的には一応関わりはありませんが、「誰も住みたくないような、こんな極寒な土地がネイティブ・アメリカンの保留地?これって大問題なのでは?」という気持ちがずっとついて回ります。

比較的シンプルなストーリーですが、サスペンスとしても面白く、そこに社会問題を絡めており、非常に良質な作品でした。しかも、実話ベースだとは。

私が知らないだけかもしれませんが、黒人の方を中心とした人種差別問題はたくさんの映画で取り上げられているのに比べ、ネイティブ・アメリカンの置かれた社会問題を描いている映画は非常に少ないように感じます。

少し話は逸れますが、トランプ大統領になりアメリカは移民を厳しく取り締まる方向に舵を切っています。

不法移民に関しては法を犯しているので理解できますが、でもアメリカはそもそも移民の国。トランプ大統領だって移民の子孫、その他のアメリカ市民の大半も移民か移民の子孫。

ネイティブ・アメリカンこそが元々そこに住んでいたのに、移民に厳しくという方針にどこか大きな矛盾を抱えているように思えてなりません。

移民を規制したとしても、同時にネイティブ・アメリカンの置かれた状況の改善にも取り組むべきなのでは。

トランプ大統領には、ぜひこの映画を観て欲しいです!

2025-33
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