凛太朗

ウインド・リバーの凛太朗のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.3
アメリカ合衆国ワイオミング州のネイティブ・アメリカンの居留地であるウインド・リバー。神すら見放したようなこの極寒の地で、少女の死体が発見されたことによって展開される凄くヘビーなお話。

そう。物凄くヘビーなんだけど、強烈に心に残りすぎて、続けて2回目の鑑賞をしました。
サスペンスやミステリーとして優れていて、ハラハラドキドキできて面白い!っていうのとはまた違うんですけどね。敢えて言うなら、極寒地帯で展開されるハードボイルドな現代版西部劇であり、重厚なヒューマンドラマですかね。

ストーリー自体は単純。ベテランハンターのコリー(ジェレミー・レナー)が、ネイティブ・アメリカンが追いやられた土地ウインド・リバーで少女の死体を発見。この少女がコリーの友人であるネイティブ・アメリカンの血が流れるマーティンの娘ナタリー。
FBIの新人捜査官であるジェーン(エリザベス・オールセン)が現地に派遣され捜査を開始するのだけれど、都会っ子のジェーンはウインド・リバーの自然の厳しさを身をもって味わうと同時に、この地が抱える闇と直面することになる。

単純な話なんだけれど、『ボーダーライン』などの脚本家として知られるテイラー・シェリダンの脚本がやっぱり素晴らしいんでしょうね。本作では監督も務めていますが、兎に角ジェーンが見せ付けられる現実と同じくらい、観ている私もその現実をこれでもかというくらいに叩きつけられた感じがして、観終わった後兎に角しんどかった。
観てる途中、ある場面転換で、ひと時の平穏・安らぎ・幸せといったものがぶち壊されたその時、とんでもない怒りを感じたりもしました。その後、緊張の糸が切れたような突然のアクション。しかしオレの心にある鬱積した気持ちが晴れることはなく。

そもそもなんでこんなことになってるんや?というのが大きなテーマなんですよね。
アメリカという国1つとっても、人種差別の問題やら、LGBTの問題やらと色々ありますけど、そもそも忘れてないか?と。
アメリカという国は、大陸から流れてきた人間が、もともとその地に住んでいたネイティブ・アメリカンを迫害して保留地に追いやった上で成り立った国なんやぞと。
保留地に隔離されたネイティブ・アメリカンは、住むところどころか、文化すらも奪われ、いつしか忘れられた存在となっている。

ネイティブ・アメリカン女性の失踪者の統計はないんだそうな。死化粧の仕方すらも正しいのかどうかわからない。教えてくれる人がいないから。
兎に角色々ヘビー。しかし己の弱さを痛感させられると同時に、強く生きることを教えられる素晴らしい映画でございました。

エリザベス・オールセンは可愛いし、何よりジェレミー・レナーのハードボイルドな佇まいがホント素晴らしい。
凛太朗

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