けーはち

フィッシュマンの涙のけーはちのレビュー・感想・評価

フィッシュマンの涙(2015年製作の映画)
3.5
韓国映画。とある新薬の人体実験で首から上が魚に突然変異した青年を巡って巻き起こる騒動を媒介に、社会・人間の在り方を風刺する。『シェイプ・オブ・ウォーター』あたりと同じ、異形(水生)が織り成す現代の幻想寓話といったところか。同作とは段違いに魚がへっぽこ被り物丸出しなのだが、それが妙な哀愁を醸し出す。

コネも学歴もなく社内で露骨にイジメられながらテレビ局の正社員を志す主人公。嘘か真か知れないネットの噂話を探り、異形の魚男に接近する。魚男の情報をリークしカネをせびる女、賠償金狙いで訴訟を起こす青年の父親、ウサン臭い人権派弁護士等、戯画化されたキワモノたちが物語を彩る。そして、魚男のナースへのセクハラ疑惑という根拠薄弱な報道で世論が傾き、逆転敗訴……格差やコネ、報道に踊らされる世論、賄賂や不正など日本以上に露骨に歪な韓国社会の若者の生きづらさ、実感が異形の魚男に象徴されているようだ。しんみりと暗いが一抹の希望を見出そうとする社会派ブラック・コメディ。

頭のおかしな人が「北の工作員めー!」とか言って魚男に赤いペンキを投げつけてくるのはシュールだった。その手の思考回路が意味不明の妄想陰謀論者って、どこにでもいて、ご当地なりのバリエーションがあるもんだね。