【愚かの環】
原作は未読。エミリー・ブラント×レベッカ・ファーガソン×テイト・テイラー監督…なら拾い物かと期待したら、なかなか充実しておりました。
後から知ったが脚本も、大好きな『セクレタリー』『毛皮のエロス』のエリン・クレシダ・ウィルソンだった。『クロエ』では冴えなかったが今回のおんな映画、地道に嵌ったと思います。
物語は単純で、謎解きが映画の目的ではないですね。
エミリー演じるレイチェルが、毎日電車に乗りますが、目的地に行くのではなく延々同じところをループしている。まるく繋いだ鉄道模型のように。そのウソ列車の窓辺から、輪の内側にある過去の自分をひたすら見つめ、現実から逃げている。
で、この環の中から出られるのか?というのが本作のテーマだと思います。
レベッカ演じるアナ、ヘイリー・ベネット演じるメガン、それぞれ美しく魅力的に映りますが、これら三人の女は実は皆、愚かで依存的、輪の内側にいることがわかってくる。
が、そう言えるのは外側から冷静に眺めているからで、自分が彼女らの立場ならやはり…と感じる弱みが共感の入口。
この原作がアメリカで受けた理由はわかりませんが、かの国の女性たちもまだまだ、こんなに抑圧されている…少なくともそういう気持ちが大きいらしい…という恐らくの現実にすこし、遣る瀬無くなりました。
個々の人物を個別に掘り込んでいく展開ですね。その心をブラックボックスとして扱い、やがてその藪から蛇が飛び出す。
剥き出しとなった蛇…そして蛇同士はどうなるのか?本作の沸点。で、やっぱり女って怖い、と思わせた先で、いや、やっぱり男の方がより残酷…と進めてさらに、その先がある。なかなか豊かな、負の三段跳びでした。
『ゴーン・ガール』もそうでしたが、ヒロインがガールと呼べない年齢なのに、タイトルにそう付けると最近、売れるのだそうな。わかる気はします、その不安定感。
さて、世界中に「ガール・イン・ザ・サークル」はどれくらいいて、外に出られず足掻いているのだろうか?
エミリーさんのアル中演技は、実際に近づきたくねーな、と思えるほどお見事でした(笑)。そしてレベッカさんとヘイリーさんの冷やかな肉感性が、たいへん美味でございました。
<2016.11.28記>