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ガール・オン・ザ・トレインのKEYのレビュー・感想・評価

3.9
※今作は、前知識無しでの観賞をオススメします。(filmarksのレビューも読まない方が良いかも。)

今作は、レイチェル、メガン、アナの3人の視点で描き、その上回想シーンと現在を何度も行き来する、ミステリー映画らしいややこしい構成になっています。しかし、実は話の軸としてそのトリックに負けないくらい重厚な人間ドラマが描かれている。

まず今作のパッケージ&タイトルの「ガール・オン・ザ・トレイン」にもなっているのが、主人公のレイチェル。彼女は夫の浮気が原因で離婚するが、未だに夫に執着し、自分と選んだ新居に住む夫と再婚相手のアナを仕事の行き帰りの電車から眺めるのが日課になっていた。
やがてレイチェルはその家二つ隣の家に住む、メガンにも興味を持ち始める。彼女はレイチェルにとって理想の夫婦像だった。テラスで夫とキスをする姿は、愛に満ちている。レイチェルは自分が幸せだった頃の姿とメガンを重ね合わせているのだ。
冒頭から上記した様な自分の心理状態の語りから入るわけだが、とにかく重い。カバンにはアルコール瓶と水筒が入っていて、ほとんど毎日泥酔状態が続き、翌朝には前日の記憶がほとんど無い。
電車の乗客は、皆自分の事を観ている。このシーンは現実なのか妄想なのかわからないが、誰がどう観ても異常者なので見られていてもおかしくは無い。
そんなある日、理想の夫婦だと思っていたメガンが他の男とキスをしているところを偶然目撃してしまう。
面識の無い相手だが自分が夫の不倫を知った時と重なり、彼女の怒りは一気に頂点へと達する。
翌朝起きると体は血とゲロとアザだらけだったが、前日の記憶が無い。そしてメガンは行方不明に…
ここまでは序盤の30分間くらいの出来事で、この後誰がメガンを殺したのか?に焦点が当てられ、謎を解いていくのだ。
内容が濃ゆいし重いし、何せテンポが悪い。
しかも今作のレイチェルの行動もそうだが、メガンの行動もとても理解できるものではない。彼女には、兄が死んでから兄の友人とヤリまくり、子供を産んだ過去がある。しかしある日、子供を抱きながら浴槽に入っていると寝てしまい、窒息死させてしまったのだ。17歳でこんな経験したらどうなるだろう。
確かに彼女が悪いが、これは事故である。
誰も彼女を責める権限なんて持ってない、でも自分に非があるとわかっている時は誰だって自分を責めるだろう。
そういう時こそ夫や彼氏が支えてあげるべきなのに、赤ん坊の死体を埋めた後、彼氏はすぐに出ていってしまう。
そんな過去が未だにトラウマで、赤ん坊が苦手なのだ。

今作で描いているのは、「精神的暴力」である。メガンやレイチェルの行動が理解出来ないのは、おそらく彼女達がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってるからである。だから普通に考えれば自分は悪くないようなことで、自分を責め続けているのだ。
構成上ラストでどんでん返しが待っているのだが、この構成も彼女達3人の心境と重なって、今思い返すだけでも涙が出てくる。

また、今作のクオリティを底上げしてるのは、レベッカファーガソン、エミリーブラント、ヘイリーベネットの演技だろう。
メガン役のヘイリーベネットは、カウンセラーを誘惑したり緊張を誤魔化すために笑う癖などの病んでる演技が上手すぎる。
そしてレベッカファーガソンとエミリーブラントの、真実を知った時の表情。本当に驚いた時は、その意味も自分の感情も理解出来ないのだ。
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