雨のなかの男

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの雨のなかの男のレビュー・感想・評価

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U-NEXTで鑑賞。直前に『白い肌の異常な夜』を観たためか、とても物足りなさを感じた。老若男女問わず個々人の掘り下げが全体的に浅くなり、邪悪さがなくなっていた。コリン・ファレル演じるマクバニーは、かなりニュートラルな存在になり、誰彼構わずキスを与え誘惑する男ではなくなった。ヒゲも自らの意思で剃り、自由に部屋を行き来し、庭仕事に汗を流す。言行不一致のフラッシュバックもなくなり、彼の邪悪さを示す場面は殆どなくなった。それ故にシーゲル版にあった邪悪な男女の闘争の見応えがなくなったとも言える。校長のマーサの近親相姦の要素も一切排除され、聖職者としての欺瞞やアンモラルさがだいぶ薄くなった。何より大きな変化として黒人奴隷のハリーがいなくなった。彼女は南北戦争を象徴する存在であったはずだし、あの女性社会において最も低い位置にいる重要な存在だった。『白い肌の異常な夜』ではマーサの兄に暴行される過去を持ちながらも、マクバニーに尊厳を奪われまい必死に立ち向かった勇敢な女性だったのだが…。戦時下の、小さな館で起きた戦争だということを思い起こさせる重要な場面だったように思う。なぜ彼女の存在を無くしてしまったのか。全体的に画面は暗すぎるし、亀の投げも甘い。そう、亀の投げ方の甘さがこの映画の「マイルドさ」の全てだ。
雨のなかの男

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