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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

4.7
1864年。美しい鳥のさえずりが響くバージニア州の森には、遠くから絶え間なく大砲の音が聞こえ、3年目に突入した南北戦争が暗い影を落としていた。 キノコ狩りをしていた女子寄宿学園に通うエイミー(ウーナ・ローレンス)は、傷を負った北軍兵士マクバニー(コリン・ファレル)を発見。手当をするため学園へ連れ帰ることに。 
マーサ・ファーンズワース女子学園は、園長のマーサ(ニコール・キッドマン)、教師のエドウィナ(キルスティン・ダンスト)、そして家に帰ることができない事情を抱えたエイミーをはじめ、 アリシア(エル・ファニング)、ジェーン(アンガーリー・ライス)、エミリー(エマ・ハワード)、マリー(アディソン・リーケ)の5人の生徒が暮らしていた。 
招かざる敵兵の出現にはじめこそ戸惑うものの、キリスト教の教えに従い回復するまで面倒を見ることに。 
男子禁制の学園で暮らしていた乙女たちはマクバニーに興味津々。早熟なアリシアは思わせぶりな視線を投げかけ、エドウィナはブローチをつけて秘かにおしゃれをし、まだ幼いマリーも負けじとエドウィナの真珠のイヤリングをつけて着飾る始末。 
園長のマーサはそんな彼女たちをたしなめるものの、手当をするために久しぶりに触れた生身の男性の身体に、彼女自身も胸の高鳴りを抑えきれずにいた。 
手厚い看病を受けるマクバニーは、誠実な態度で信頼を勝ち取り、7人全員から好意的に受け入れられるまでに。
ただし、誰にでも愛想を振りまき、女性たちが自分に虜になることを楽しむかのような態度は、秩序を保ってきた集団の歯車を次第に狂わせていく。 
脚の傷が回復したマクバニーを囲み夕食会を開いた7人は、目一杯のおしゃれをして音楽やダンスを楽しみ、戦時中とは思えないほど優雅で幸せなひとときを過ごす。 
ただし、うわべでは美しい言葉使いを貫きながらも、周囲を出し抜こうと会話にチクリと棘を忍ばせ、競うようにマクバニーを求める嫉妬と欲情は最高潮に。 
その晩起きたある出来事によって、危うい均衡を保ってきた愛憎劇は予想もつかない展開に。
秩序を守るのか、欲望を取るのか、果たして7人の下す決断とは。そして、女性たちの獰猛な本能を誘発してしまったマクバニーの運命とは……。 
以前クリント・イーストウッド主演で映画化されたトーマス・カリナンの同名小説を映画化。
自分を救ってくれたエイミーには「君は一番の友達だ」と言い、純粋で男に騙され易いエドウィナには「初めて話した時から愛している」と甘い言葉を囁き、学園長のマーサには敬意を持って接し、学園の女たちに如才なく取り入るマクバニー。マクバニーに対する欲望を甲斐甲斐しく世話する優しい態度の裏で募らせる学園長のマーサ、マクバニーの甘い言葉に愛欲を募らせていくエドウィナ、お兄さんのようなマクバニーと親しく出来るのが単純に楽しいエイミー、年上のマクバニーに憧れ周囲を出し抜き誘惑するアリシアたち女子寄宿学園の女子。マクバニーが庭仕事しているとカラフルなドレスで通りかかったり、マクバニーの部屋に来て甲斐甲斐しく世話したり、周囲を出し抜き関心を持ってもらおうと話をしたりなど、マクバニーの心を奪おうとする女子寄宿学園の女子と如才なく取り入ることで早く故郷に帰ろうとするマクバニーの駆け引きは、マクバニーを招いた晩餐会での、マクバニーの関心を得るため美味しいアップルパイを作ったり美しい歌声を聞かせたりの女子同士のマクバニーに対するアピール合戦、お互いに出し抜かないよう牽制し合う女子同士のラブバトルはさながら合コンでイケメンを目の前にした女子同士のラブバトルのようで、美しいサテンやフリルのついたドレスの裏側にある女子の嫉妬や欲望が、女性監督ならではのリアリティーで描かれ、女性には共感出来て男性には女性の嫉妬や独占欲の怖さに戦慄すること間違いない前半のラブサスペンスがリアルで怖い。
ある出来事から急展開するオチは、女子同士の連帯感の固さに男性は勝てないんだなと、ゾクッとさせる凄惨な結末で、カンヌ映画祭で監督賞受賞も納得のサスペンススリラー映画。
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