せいか

ブレードランナー 2049のせいかのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

(※2021/07/06追記:2021/07/06にブログに清書したレビューを投稿しました https://to-the-kind-reader.hatenablog.jp/entry/2021/07/06/144331)

(感想雑多自分用メモ書き)

なんかこう、ゲームのシナリオをそのまま映像化しましたみたいな作品だった。むろん、そんなことはないのだけれども。
始終、起伏はぼちぼちある割に映画としては長ったらしく退屈に感じていたが、多分、そういう雰囲気があったからかもしれない。仮にゲームだったら遊び要素を挟むことでなんか適度に楽しみ、よくできたシナリオだなあとか言ってたのではないかと思う(※個人の感想です)。


本作は、映画『ブレードランナー』続編で、数十年後の未来を描いたもの。本作では人間たちはとにかくアンドロイド(レプリカント)を憎んでおり(数十年の間に確執が深くなったようである)、任務をこなして社会に貢献していようがいまいが知ったことではない。
主人公もレプリカントで、ブレードランナーとして勤めている。前作のデッカードはあくまでその可能性が示唆されただけなのに対し、そうした面を殊更強調してあえて描いている。

少なくとも本作では、原作同様、アンドロイドはどちらかというと人造人間に近い(たぶん、前作もそうなのだとは思うが)。そして本作ではアンドロイドに対する技術が進み、より高度な存在になりながらも迫害されている現状にある。
ここで問題となるのが、アンドロイドであるレプリカントが妊娠をしてヒトとの壁を超えたかもしれないということでもあり、とにかく本作においてはアンドロイドとヒトのあわいに対し、アンドロイド側から問うような内容を前作以上に濃くしているらしい(が、やはり原作のそれとはまた毛色が違うのだが)。
前作にしろ本作にしろ、「(あなたは)スペシャル」であるという言い回しこそすれ、やはりここも原作のもつ意味合いとは違って文字通りのものというか、浅くなっているよなあと思いもする。

というか、前作の監督は明らかに、デッカードをレプリカントにしたがっていたが、続編監督は本作でデッカードはヒトであると結論付けた上で核となる話も進むので(レプリカントであるレイチェルとヒトであるデッカードが子供を作ったというのが核なので)、なんだか曖昧にしていたうまみが取り除かれてしまった気もしている。話も冗長で前作の良さも骨抜きで、たぶん熱心なブレードランナーファンには面白い点も多いのかもしれないが、一視聴者としてはひたすらに無卿さを感じる。
特にやはりデッカードと対面するあたりのシーンはそういった意味で山場で、ある意味、劇場版の『ドクター・スリープ』を観ていたときの最悪な気分を思い出す。
全体的に蛇足というか、続編はいらなかったのではないかと思う。前作のハッピーエンド版を汲むにしても。

機種改良したレプリカントは嘘もつくし駆け引きもする。型落ちとはいえレイチェルは子供すら作る。というか、子作りできるか否かは自分たちの種の存続を自分たちで握れるようになるという意味で重要なのだろうが、それがなくてももはやすでに人臭いように、もはやヒトとの境界は曖昧になっているようには描かれているが、やはり深みはない。

また、愛情などが本物であるか偽物であるかのこだわりも本作の特徴となる。デッカードのレイチェルへの愛、主人公とヒロインの愛、肉体の有無、ヒトかレプリカントであるか。そこも軸ではあったが、大して琴線には引っかからず。
記憶(ないし記憶操作)なんかも軸にあり、この点は個人的な興味もかなり強い箇所なのだが、本作で描かれているそれもやはり私にはとにかく退屈さが勝った。

前作のヒロインのレイチェルも人並みはずれた美貌があったが、今回、また理想的なお人形さんとして存在していた機械でできたホログラムのヒロイン役の人も大変美しい造形をしていた。
どちらのヒロインも実際の人間味は無視されたところで愛を描かれているところがあると思うので(レイチェルは淡々と、本作ではレイチェル含め皮肉的に)、そのあたりはなんともいえない良さを感じた。本作では「ガラテア症候群」なんてものが曖昧に登場していたが、ヒロインたちにはピュグマリオンの物語が投影され、さらには『未来のイヴ』を意識したりなんだりともろもろが線となって引っ張られてるのかもしれないが、上記のとおり退屈に思いながら観ていたので、どうでもいいかな……。


自分が特別な存在だと微かに希望を持ちながらも真相を追い(そして本作では自分こそ特別であることがほとんどすべてのアンドロイドの夢なのである)、邁進し、最後はデッカードとその本当の子供を再会させるために見送りながらひっそりと雪の中で死んでいく主人公は切なかった(前作のロイのラストとの類似でもある。奴隷の一生は苦しみに満ちている)。
この点は好きだなあと素直に思った。
せいか

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