誤解を恐れず言えば、これは「ブレードランナー」ではない。
いや、もちろん、デッカードやレイチェルも出てくるのだから、正真正銘の続編だけれど、印象がまるで違う。
人も雨も雪も街も廃墟も、画面の隅々まで観るもの全てが綺麗なのだ。澱みがない。それは30数年の進化によるのかもしれない。しかし、この作品を観て、やはりあの時代のテクノロジーで描いてこその「ブレードランナー」だったことを思った。どこか安っぽく薄汚れたあの感じ。「強力わかもと」のような強烈なイメージを残すビジュアルはこの映画にはなかった。
だからと言って、この映画を否定しているわけでは決してない。
前作に敬意を払いつつ、似通ってはいるが別の世界を作り上げている。あくまで前作を傷つけないよう、丁寧に丁寧に。だから、この世界には入りやすいし馴染みやすい。この世界をずっと観て感じていたいと思う程、どっぷりとハマってしまった。
人造人間やAIやVRやコンピュータなどの人工物が憧れる人間的な触れ合いや実感のある記憶、そして生命の連鎖。人間が忘れかけてる根源的な生命の神秘を、人工物である彼らが問いかけるようだ。
VR（アナ・デ・アルマス）の最後の一言には思わず涙が出た。
人工物と生物の境界があやふやになる未来においても、やはり鍵となのは愛だとは！
ドブの底のようにうす汚く猥雑な世界の中で繰り広げられるノワールで男性的な旧作に比べ、この映画がどこか女性的な印象が強いのはそのせいか？
まぎれもなく、ヴィルヌーヴ！
