湯っ子

午後8時の訪問者の湯っ子のネタバレレビュー・内容・結末

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

私という人間は、誰かを生かすことに関わっているはずだけど、もしかしたら、誰かの死に関わっていることもあるかもしれない。

主人公ジェニーは医師であるということを職業=生業を超えた使命のように感じていて、関わる人のいのちを全て救いたいし、そうしなきゃと思っているらしい。だから、クリニックを訪れる人や、電話のコールには必ず出る。それなのに、たった一度、コールに答えなかったことで起きてしまったことと、コールに答えなかった理由からの罪悪感が彼女を突き動かす。
ジェニーの罪悪感の強さは、医師としての使命感の強さと表裏一体。そして、強すぎる使命感の中には、ほんの少しの傲慢さがあるように感じる。医師である自分は、人の生死を全てコントロールできると思っていたようなふしがあるんじゃないだろうか。
この一連の出来事を通して、主人公のジェニーは強い使命感はそのままに、諦念というか、運命を受け入れる覚悟を身につけたんだと思う。だからこそ、人のいのちを守りたいという意志をさらに強くしたように感じた。

これまで観てきたダルデンヌ作品とはちょっと違うサスペンス調だったけど、やはり視点は他の作品と同じく、厳しさを見据えた上でのあたたかさや光を感じる。リアリストでありながら人間の善を信じてる。だからやっぱりダルデンヌ先生、って呼びたくなっちゃうんだな。
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