医者としての、並々ならぬ「死」に対する執着。単なる後悔から来る使命感だけでは、あんなに能動的にはなれない。
社会問題を織り交ぜながら、淡々と対象を追っていく従来のスタイルは変わらないけど、今回はいつになくストーリーが起伏に富んでいた。
誰かを助けて笑顔になったかと思えば、次の瞬間にはまた険しい現実が立ちはだかり、アップ、ダウン、アップ、ダウン。秘密を隠した少年が、脈を早める中盤から、それはどんどん顕著になっていった。
ただし、謎解きサスペンスの皮を被っているように見えても、本質がヒューマンドラマであることに変わりはない。
誰よりも他者の「死」を見つめ続けている医者であるからこそ、誰よりも強く「生」に寄り添うことができる。
「ラストシーンが良ければ全て良し」でおなじみのダルデンヌ監督の作品集に、新たな名作が加わったな、と感じています。