ピロシキ

関心領域のピロシキのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
真っ暗な画面にミカ・レヴィの音楽だけが流れる冒頭。さぁ「音」ですみなさん一旦落ち着いてまずは音に耳を傾けて、ってか。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の序曲を思い出す。今から何が起こるんだろうというドキドキと、それにしては長すぎる暗闇に「これ…何?笑」という困惑。けっきょく落ち着くどころか感情を掻き乱れたなかで幕を開ける『関心領域』、やはり音。お庭のお花に見とれているあいだに、遠くから聞こえるのは銃声、悲鳴。エンディングの曲なんか怖すぎる。オバケなんて一体どころか無数に出てきそうなまがまがしさ。

壁の向こうから聞こえる音には耳を向けず、煙突から上がる黒煙には目もくれず、壁を隔てた向こう側で起こっていることは気にも留めず、関心があるのは、自分自身の優雅な暮らしを守ることのみ。この作品を通して、ナチス下ドイツの忌まわしき歴史は、現代を生きる我々の生活へと反射する。海や大陸を隔てた遠くの国で今まさに起こっていることに対して、無関心になってはならないーーーアカデミー受賞スピーチでのジョナサン・グレイザー監督のガザに関する言及はまさにそれであり、さらにそれに対する周りの(その場にいた観客を含めた)反応も含めて、すべてが『関心領域』の警告する「現代」そのもの、ってか。はぁ。
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