まさなつ

午後8時の訪問者のまさなつのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.8
ダルデンヌ兄弟監督、この人達もブレない。

もし、あの時、ああしてたら、、?
誰もが経験する後悔。それも些細なことで、さらにいつもなら違う判断をしてたろうに、たまたまその時の感情で判断した時に限って、予想もしない事になってしまう、、。

まるで、静かな池に、小さな石が投げられ、波紋が徐々に広がるよう。

主人公は若い女医。老医師に代わり診察していた小さな診療所で、午後8時を超える時間に入り口のベルが鳴る。診療時間ははるかに過ぎており、そこには研修医の青年もいて、彼との些細な意見の違いもあり、ドアを開けなくてもよいと判断した。特にその判断に間違いはない。

しかし、翌日、その時ベルを押した黒人少女が死んだことが分かる。

あの時、もしドアを開けていたら?

そこからの彼女の思いは多くを語られないが、痛いほど伝わってくる。そして、行動にエンジンがかかる。
最初は、彼女の行動力に感心しました。それが、だんだん、そこまでしなくても、、とも感じ始めました。
勤めることが決まっていた病院を断ったり、怖い人達に脅かされたり、、。周りの人も彼女の判断は仕方ないという意見が多いし、私もそう思いました。
それでも彼女の意思は変わらない。ある意味、立派だとも思います。

映画は彼女に肩入れするわけでもなく、淡々と事実を描いていきます。それ故に、あなたならどうする、、を突きつけられるようです。

最近、ヨーロッパの映画では、移民問題がよく取り上げられます。
この作品でも、声高ではなく、あくまで日常の延長として描かれています。

苦しんでいる人達を助けたい気持ちもあるが、自分達自身も苦しく、手を差し伸べられないこともある。また、それを悪用する輩がいたりもする。移民受け入れやその扱いに対して、いろんな考え方があるとしても、それに無関心でいることが一番良くないと、静かに訴えてる気がしました。
彼女の行動は、医者というエリートの自己満足だったり、ちょっとお節介過ぎたりもするけれど、それぐらい自分事として考えてみてもいいんじゃないか? そんなことを感じました。

彼女は、とても良い医者になると思います。ただ、患者のことを抱え込みすぎるんで、身内なら心配でしょうがないだろうな ^_^

イギリスにはケン・ローチがいて、ベルギーにはダルデンヌ兄弟がいる!
まさなつ

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