特集/市川準と女優たち
むかしはこの暗いムードがいやだったが、久しぶりに観た映画は染みた。頑ななこころが少しずつ動きはじめてゆくさまをつづる繊細な演出。80年代の東京と浦安の風景がドキュメンタリー的に切り取られているが、この時代の映画をいま観るときの気恥ずかしさはない。
『BU・SU』当初の監督は大林宣彦で『さびしんぼう』『姉妹坂』につづく冨田靖子(当時の表記)とのコンビになるはずだったという。内館牧子の脚本もそのときのものだろうか。しかし結果的に市川準でよかった。いっけん明るい80年代の空気とそこに身の置き場のない冨田靖子の対比が成功している。