Ryu

わたしは、ダニエル・ブレイクのRyuのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ハッピーエンドの映画ではない。
あまりにもリアルで救われないストーリー。
目を背けたくなるが、目を逸らしてはいけない。これはどこの国にも存在する現実。
イギリスの話だが、遠い異国の話ではない。
誰のために国家、政治、福祉、公務員が存在するのか…そんなことを深く考えさせられた。

特に最後、ケイティが葬儀で読み上げるダニエルの手紙が心に刺さった。

『私は依頼人でも顧客でもユーザーでもない。
怠け者でもたかり屋でも物乞いでも泥棒でもない。
国民保険番号でもなく、エラー音でもない。
きちんと税金を払ってきた。それを誇りに思っている。
地位の高い者には媚びないが隣人には手を貸す。施しは要らない。私はダニエル・ブレイク。
人間だ。犬ではない。
当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。
私はダニエル・ブレイク。1人の市民だ。
それ以上でもそれ以下でもない。』

確かに、税金から社会保障が賄われる以上、その支払いには正当性が必要。不正取得や過剰な支給があってはならない…でも、これまで真面目に生きてきて、病気や怪我で仕事ができなくなった人が救われない社会はあってはならない。それを防ぐのが国家であり、法律であり、制度のはず。本来は国家・市民を助ける制度や公務員が逆に善良な国民や市民を死や貧困に追いやる…そんな矛盾を真正面から映し出した作品。

何のために弁護士になったのか…
そんなことを深く考えさせられた映画。
Ryu

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