そして、紛れもなく、こちらも日常。
フィリピン映画って観た記憶がない気がします。
ブリランテ・メンドーサ監督。
まるでドキュメンタリーのようなリアリティで描かれるマニラのスラム街。濡れた服が乾かない、湿気の多さがまで画面越しに伝わってきます。
ローサとその家族に自分がカメラを持って、同行してるかのような作品。
この作品の中で9割は、げんなりしてしまう現実、それは麻薬を売らないと生活できないローサ家族にも、それを気軽に買いにくるスラム街の住人達と、その人々の間に広く深く麻薬が浸透してしまっている現状にも、そしてなにより麻薬の売買をだしにして弱者から徹底的に搾取する腐れた警察官達にも。
そのせいで、密告が密告を呼ぶ負の連鎖。
これらがあまりのリアリティで描かれるため、ほんとげんなりしてしまいます。
まさに監督が、我々に向かってこの現状を見てくれ!と言っているかのようです。
しかし本当に描きたかったのは、のこり1割の希望の部分じゃないだろうかと思う、けして綺麗に描かれてるわけじゃない希望、皆自分の生活でいっぱいだから、しかし涙が出そうになるほど綺麗に見えました。
観るほどにこの現状を簡単に変えることはできないと思い知らされる、その厳しさを描きつつもこの作品は、それでもここで生きていかなければいけない人々へのエールに感じました。