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護送車の中で/クラッシュのkiritoのレビュー・感想・評価

護送車の中で/クラッシュ(2016年製作の映画)
4.0
【人間という生き物】

タイムラインでも高評価の方が2人もいらしたので、急遽当日券で凸してきました。
画面からヒリヒリするような現場の臨場感を味わえる映画だった。

テーマは2011年のエジプト革命→2013年デモといった事件が起きたエジプトの当時の『ある1日』を描いている。
多分エジプト映画を見るのは初めてだと思われます。


映画の舞台はある警察の護送用のトラック。
このトラックでの密室劇がこの映画の醍醐味である。

冒頭。長くうつされるトラックの車内のカット。
そこに、報道のカメラマンと記者が無実の罪で収容されることから物語は始まる。
そのうちに同胞者と、支持者と、反対者と…様々な人間が収容されていく。
老若男女、宗教の違い、職業の違い…そういった外形的には違うけれど、同じ『人』が密集するのである。

だからこそ、この映画は『人』とは何かを問いかけてくる。
考え方の違いや、ちょっとした誤解が疑心を呼び、対立をうむ。
わずか4畳もない程の空間に15人程の人間があつまり、緊張関係にあれば争うなというのがどだい無理な話である。

面白いのは、彼らはそれぞれ思想を持っているものの、中身は同じ『人』であることを示唆する描写だ。
女性をいたわったり、病人に気を使ったり…そして共に歌を聴く…
だからこそ、最後の10分にこちらは焦燥感を覚えるのだ。

あの動画は世界に発信されただろうか?
怪しく光り続ける緑のレーザーポインターがライブとは違う何かを我々に訴えかける。

日本人には俄かには信じがたいが、これが世界なのだ。

2016.11.1
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