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ギミー・デンジャーのSariのレビュー・感想・評価

ギミー・デンジャー(2016年製作の映画)
3.7
1960年代末のガレージロックを代表するグループ:The Stoogesの熱狂的なファンであるジム・ジャームッシュが監督したドキュメンタリー。フロントマンのイギー・ポップの過激なパフォーマンスが特徴で、後のパンク/ニュー・ウェイヴに大きな影響を与えたバンドである。
ロックの歴史で最も重要なバンドとして今でこそ評価されているが、当時の彼らの音楽にたいしての批評は厳しいものだった。

両親と共にトレーラーハウスで暮らしていたジェームズ・ニューエル・オスターバーグ・ジュニア(イギー・ポップ)は、高校時代に「ジ・イグアナズ」というバンドでドラマーとしてキャリアをスタート。音楽に対する真剣な思いから、黒人の高名なミュージシャンのバンドでドラムを担当した結果、白人の自分に本当のブルースは理解できないと悟り、自分のような若者に向けた音楽をプレイしようと決意。
その後、ドラマーからフロントマンに転向。
幼い頃によく見ていたテレビ番組のコメディアンの決め台詞が強く残っていたことから、作詞は「25文字以下」と簡潔を心がけたという。

1967年結成時より「サイケデリック・ストゥージズ」としてカバーを中心に活動。

1969年のメジャーデビュー時に「ザ・ストゥージズ」に改め、元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルのプロデュースでデビュー・アルバム『イギー・ポップ・アンド・ストゥージズ』を発表 。
1970年2ndアルバム『ファン・ハウス』、1971年デヴィッド・ボウイと出会い、ボウイの協力の元1973年『ロー・パワー』を「イギー・アンド・ザ・ストゥージズ」の名義で発表。
1974年の解散まで計3枚のアルバムを発表。

初期メンバーはイギー・ポップ、ギタリストのロン、ドラマーのスコット・アシュトン兄弟、そしてベーシストのデイヴ・アレクサンダーで結成。

本作のインタビューはイギーが中心ではあるが、スコット・アシュトン、撮影時既に他界しているロン・アシュトンの過去インタビュー、2ndアルバム時に加わったサックス奏者スティーヴ・マッケイ、3rdからバンドに加わったギタリスト、ジェームズ・ウィリアムソンのインタビューも交えている。(そのためロンがベーシストに転向)
既存映画のワンシーンや、バンドストーリーに沿ったアニメーションを挿入したジャームッシュらしさのある演出によって、単調なインタビューのドキュメントになることを避けられており、監督のストゥージズ愛が溢れている。
ストゥージズの音楽性に影響を与えた、放浪生活で楽器を作って作曲していたアメリカ現代音楽家ハリー・パーチの名前を挙げていたりと興味深い。

《ゴッドファーザー・オブ・パンク》と称されるイギー・ポップ。本作内では語られていないが、20歳のイギー・ポップがThe Doorsのライブを見た時に、ヴォーカルのジム・モリソンがステージ上で一切歌わず観客を煽り続ける挑発的な態度に衝撃を受け、モリソン以上の過激なパフォーマンスを目指してイギーのスタイルが出来た。
ブルースがロックの起源である事や、パンクのルーツ<イギー・ポップ<ジム・モリソンであることが分かる。

The Stoogesの音楽に影響を受けた若い世代の数々のバンドが紹介されている。
パンクバンドThe Dead Boys,The Dictators,The Dumned,Sex Pistolsが「No Fun」をカバーしているライブ映像、ポストパンク、ニューウェイヴ、オルタナバンドのアルバムジャケットを紹介。David Bowieと、特にSonic Youthが「I Wanna Be Your Dog」をカバーしているライブ映像は最高にクール。

(話題のイタリアのロックバンドMåneskinがサマソニ2022で同曲をカバーしていた。)

青さの残る若きイギー・ポップの勢いは凄まじいものがあるが、2003年以降の再結成のステージや、インタビューに答える現在のイギーの佇まいがとにかく格好いい。
「俺はグラムロックでもヒップホップでもない。どこにも属したくない。テレビも嫌だしオルタナティヴでもない。パンクでもない。俺は俺だ。」イギーのラストの言葉が最高。
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