滝和也

LOGAN ローガンの滝和也のレビュー・感想・評価

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)
3.7
朝日なる少女と
夕日なる男。
二人のアダマンチウムの
爪光る時、新たなる
時代の扉開かん…。
ウルヴァリン最後の勇姿
をその眼に焼き付けろ!

皆さんの高評価を受け、見ました、ウルヴァリン三部作、最終章…。

「ローガン」

最初の10分で一回見るのを止めようかと思いました(T_T) こんな事を考えたんですよ。誰がヒーローのその後を知りたいのかと。正直私は知りたくない。世界を救った、それだけで良いんですよ。その後に残るは…リアル。現実なんです。

ただ辞めませんでした。今まで全てのX-MENを見てきた事。大好きなわけではなかったのですが、差別され悲劇的な存在でありながらも、結果として世界を救ってきたウルヴァリンの最後を看取ると言う、言われもない使命感。それ以上にそれがヒュー・ジャックマンの望んだものなのではないかと言う直感でしょうか。ある意味能力者の祭り映画の荒唐無稽な役を長年続けた功労者への感謝なのかもしれません。

そこには、徹底したリアルが悲しい現実と共に存在していました。驚異的な治癒能力故の不死から毒素により開放されかけたウルヴァリン。老いゆえに能力のコントロールすらできなくなるチャールズ。新たなミュータントは産まれず、既に他のメンバーは無く…。世界は未だその能力を利用することしか考えず、新たな悲劇が生み出されていました。

朝日なる存在、悲劇から生まれしローラは希望であり、ウルヴァリンはその希望を拒絶しながらも、劇中自らが夕日と悟り、彼女を助けようとする。その希望から、リアルな人、ローガンとしてのほんの少しの幸福を受取ながら…。

荒唐無稽さが売りのようなこのシリーズ屈指のリアルさ。途中ロードムービーと化し、リアルな悲劇を畳み込んでくるのは、まるでアメリカン・ニューシネマ。70年代を思い起こす展開。そして西部劇、名もない異邦人が谷あいの街を欲得なく救う名作シェーンへのオマージュ。アクションもリアリティあるアダマンチウムの爪によるものが殆どで様変わりしています。

果たして、新たなる世代への橋渡しとヒュー・ジャックマンの盛大なる送別作となりました。派手さのみが目立つ最近のシリーズとは打って変わって哀愁すら感じさせる良作とは思います。
ただ想定したヒーローのその後の範囲ではありました…。

お疲れ様でした。ヒュー・ジャックマン。
滝和也

滝和也