ゆみモン

ハクソー・リッジのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

これまでに数多く見た戦争映画、特に沖縄戦を描いた作品の中でも他とは大きく異なる視点からの作品だった。

ハクソー・リッジとは「のこぎりの崖」を意味し、150mにも及ぶ断崖絶壁の前田高地に米軍が付けた名前。そこは、日本軍にとっては南下してくる米軍を迎え撃つ沖縄防衛戦の要だった。一方、米軍にとっては大きな苦戦を強いられた場所だ。

この作品は、沖縄戦で武器を持たずに75人を救ったクリスチャン兵の実話。
セブンスデー・アドベンチスト教会の忠実な信徒であったデズモンド・ドス(1919〜2006)は、聖書の「汝(なんじ)、殺すなかれ」の戒めに従い、戦場でも武器は一切持たず、米陸軍の衛生兵として人の命を救うことに徹した。そして、激戦地となった沖縄の前田高地では、自軍が撤退する中、自らの命の危険をもかえりみず戦火の中に飛び込み、1人で75人もの負傷兵を救助した。「主よ、もう1人救わせてください」。これが、銃弾が飛び交う中でドスが神にささげた祈りだった。

ハクソー・リッジの戦闘シーンや死傷兵の描写は、目を背けたくなるようなリアルさで再現されている。戦闘シーンはそこまで長くなくてもいいのではと思った。

最後は英雄として描かれるドスだが、弱さがまったくなかったわけではない。その弱さもしっかり描かれていたので良かった。

当たり前だが、戦争は、敗者だけでなく勝者にも多大なる傷や損害や不幸をもたらす愚かなものだ。この世から戦争というものが完全になくなることを、改めて祈るのみだ。