映画武士道

ペーパーマン PaperManの映画武士道のレビュー・感想・評価

ペーパーマン PaperMan(2009年製作の映画)
4.1
(人は)誰も死なない、お化けは出ない。それなのに本当に恐ろしくて怖い映画です!そして本当に切ない映画。

なんでこの作品がコメディ扱いになってんだよ!全然笑えないですし。
笑いが欲しかったのに本当に切ない気持ちになってしまいました。
この映画は本当に怖いですし切ないです。お化けの恐怖とか人がバンバン死んじゃう恐怖はまだぬるい!という監督の強いメッセージを感じました。

あと陰キャには本当に響く映画です。そして切ない気持ちになりたいならぜひともお勧めの映画です。あと文学的な感じ?ちょっときれいな感じのストーリーです。かなりいい映画だと感じました。

私が求めていたのと全然違う方向の作品でしたけど・・・。
公式の作品のあらすじ的には創作に行き詰った作家の奮闘物語みたいな感じ。(よくある感じですが、私も時々創作活動をしていますので何か創作法みたいなのも見れたらいいなぁ~)みたいな軽い気持ちで見てしまいました。
あと主人公には空想のエアお友達がいて、もう一人のエアお友達がいる変人と出会う・・・みたいな感じのあらすじ。
結構面白そう~!みたいな設定だったんですよ。

でも見始めたら、想像以上に真面目な作品で深くて重いテーマなんだよなぁ・・・
ちなみにこの作品の本当のテーマは「自分たちの絶滅を受け入れる」「小さい頃からの希望を捨てる成長」です!
売れない作家の奮闘記みたいなぬるい作品じゃ全然ないんです!
あまりにもこのストーリーが怖かったのでレビュー書くか悩みました。子供がいらっしゃらない家庭の方は見ない方がいいかもしれません!(逆に見た方がいいかもしれない?)

以下細かいレビュー
表面上のストーリーは主人公は創作に行き詰まった中年男性作家。50代くらい?この年齢が重要。
新作を書く刺激を得るために冬の間だけロングアイランドビーチにあるコテージで一人で滞在することになる。
その作家には秘密があって小さいころから見えないお友達がいつもそばにいる。その名もキャプテン・エクセレント!見た感じはスーパーマンのパクリのようなキャラです。名前は違うけどまあ、性格も能力もほぼほぼスーパーマンです。統合失調症ですね。
主人公はいつも見えないこのキャプテン・エクセレントとお話をしています。
そしてピーターパン症候群もかかってる感じです。子供用の自転車を乗り回しています。
変人な感じですが創作してる人はまあ、変人も多いのでまあオッケーでしょう。
凄いのはこんな感じな人なのにちゃんと奥さんがいるんです。
美人女医です。そして奥さんは主人公が見えないお友達を持っていることを知っていて、それでいて結婚してるような猛者です。

創作活動のために奥さんを残して一人でコテージに滞在する主人公。
そんな主人公ですがいきなり不審者の行動をとり始めます。
子供用の自転車を乗り回し街をぶらぶらしていると、道にかわいい女の子が。(女子高生くらいかな?)
その女の子を一目見て気に入った主人公。子供用の自転車でその子の尾行を始めつきまといます。(完全に変質者です)

女の子の後ろをずっと子供用の自転車で追いかけていると、子供用の自転車が整備不良でやたらキーキーいうためについに尾行がばれてしまう!
あーこれもう通報案件だな~と思っていると。
主人公はそこで苦しい言い訳を始める。「君を一目見てうちのベビーシッターにピッタリだと思ったんだ。うちでバイトしてみないかい?」
そんな言い訳でどうにかなるわけないじゃん!と思っていたら、なんとそれでオッケー。女の子は納得した上にバイトやります!と言って主人公の家に来てくれることに。まあ主人公には子供がいないんですけどね・・・
(危なすぎる・・・この女の子は大丈夫か)

そしてバイト当日。女の子が家に来てみると、、、やっぱり赤ちゃんはいません。
主人公が「実は子供なんかいないんだよね~」って言うと女の子は「じゃあこのバイトは楽ですね!」というリアクション。
明らかにヤバイだろこの家・・・逃げて逃げて!
と思っていると主人公はそこそこ名の知れた作家だったらしく、女の子は有名作家さんの家でバイトできる!わーい!と大喜び。
明らかに女の子の身体目当てなんですけどね・・・大丈夫なのかなと思っていたらやっぱり主人公が女の子に迫り出す。(もちろん性行為を)

やばいよこの人!事件の匂いがするよ~!ドキドキです。

ここまで見るとコメディ作品とされているが、その要素はほとんどなく性犯罪の作品です。
ですがこの作品はそんな単純なものではないです。主人公がこの行動をとったのには理由があって、それは・・・簡単に言うと子供が欲しかったから!奥さんが不妊症みたいで子供ができないみたいです。しかも、主人公の一族は主人公を残してみんな死んでいるらしくて一族の血統をなんとか残したい・・・みたいな願望が主人公にはある。だけど奥さんとの関係は良好で奥さんを裏切ることへの葛藤がある。奥さんと自分の年齢的にも子供を産むのはそろそろ時間切れかもしれない・・・
消えていく自分たちの一族・・・それを主人公が受け入れるストーリーがこの作品の本当の根幹なんですよね。
しかもそれをただ描くのではなく主人公の書こうとしている新作にリンクさせて描いています。
その主人公の書いている作品の内容はアメリカで絶滅した鳥のヒースヘン。このヒースヘンは実際にいた鳥です。
その最後の一羽のストーリーを描いた作品を書こうとしている。
その最後の一羽がまるで自分のことだと思いながら・・・
その最後の一羽は何を思って生きたのか、どんな気持ちで絶滅を受け入れ消えて行ったのか考えながら・・・

そりゃ~切なくて精神もおかしくなりますよ!

精神がおかしくなってる主人公を支えるのは奥さん・・・でもなく、女の子・・・でもなく子供のころからのエアお友達、キャプテン・エクセレント!なんと、40年以上のお付き合いらしい。小さいころから友達が少なかった主人公が作り出した最高のお友達。
めちゃくちゃいいコンビです。アドバイスをしてくれたり、悩んでる時は慰めてくれたり。励ましてくれたり。仕事の時も一緒です。
女の子に手を出そうとする主人公を「気の迷いだ!やめておけ!」と一生懸命とめているキャプテン・エクセレントはほんといいやつ。
私にも小さいころから好きにアニメキャラとかいたので、こんな友達欲しかったなぁ~って正直思いました。
見えないお友達、いいですね!

ですが主人公にはそんなキャプテン・エクセレントとの別れの時がついにやってきてしまうのです・・・
この別れのシーンはほんと泣けた!彼女が死んだー!みたいな作品とかなんかよりはるかに切ない気持ちになります。

女の子の方も作品の公式あらすじにあるようにエアお友達保持者。
こっちの方は正確にはエア理想の初恋の相手?みたいな感じです。いつも女の子のことを想っていて励ましたり悩みを聞いてくれるかなりのイケメンの男の子。女の子が幼少期に双子の妹を事故で失ったショックから生み出された存在。
女の子はリアルの彼氏もいるんで、エア彼氏は微妙な立場。リアル彼氏にめちゃくちゃ嫉妬しています。だけど本当は自分は消えるべき存在だということも気づいている。ただそのリアル彼氏はイケメンだけどかなりのクズ。二股とか平気でやってますしヤクもやってます。

そんな彼氏と別れることができない女の子。主人公の作家も言い寄ってきてるのでそっちと付き合うのかな?みたいな感じ。

そして女の子の方もエアお友達(彼氏)との衝撃的な別れがやってきてしまうのです・・・自分の部屋でエア彼氏(理想の初恋の彼)がある日突然、首つり自殺した状態で発見されます。私だったらもうショックで寝込みますね!


これが精神的な成長なんでしょうか・・・本当に切ない気持ちになります。小さい頃好きだったアニメキャラとかを捨てるのは正直私にはきついですね~。バイブル的なものになってますし。
日本だとバイブルとしてアニメを一生大事にしちゃうような文化すらあるのですが(好例はスラムダンクとか)。この作品では精神的な成長のためには捨てろみたいな感じ。それが悲しい。
そしてキャプテン・エクセレントとの別れ方がこれがまた実に良くて印象的なんですよ。

そして主人公と女の子の関係はどうなってしまうのか?奥さんも登場してきて見事な修羅場になっています!気になる人はぜひとも見てください。

本当に切ない気持ちになる映画です。切ない秋気分を味わいたい人。特に子供の頃友達が少なかった私のような陰キャにはかなり響く映画です!
お勧めの映画です!
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