イチロヲ

鍵のイチロヲのレビュー・感想・評価

(1983年製作の映画)
4.0
不満足な性生活を強いられている初老の教授が、貞淑な若妻の性観念を刷新させるべく、相手に盗み読みされることを前提とした日記をしたためていく。谷崎潤一郎の同名小説を映像化している、エロティック・ドラマ(著者は原作を読了済み)。

1940年のイタリアに舞台を移し、高尚な文芸映画の雰囲気の中で、原作通りのドラマが展開される。日本における父権主義の要素を、キリスト教による抑圧に置き換えているところが、海外映画ならでは。女優の桃尻をフィーチャーした映像作りも、眼福そのもの。

本作の主人公は、愛する妻が正常位オンリーの淡白なセックスしかやらせてくれないため、そのカウンターとして性倒錯を発動させる。失神した妻の股間に照明を当てたり、娘の婚約者に妻を寝取られているところを妄想したりする。

深読みし過ぎかも知れないが、「死地を察しているからこそ、生きるための活力としてのセックスを追求する」という老人の心理を推量することが可能。性的欲動の波及力を題材にしたドラマをシンプルに楽しむことができる。
イチロヲ

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