DJあおやま

鋼の錬金術師のDJあおやまのレビュー・感想・評価

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)
3.0
あの「鋼の錬金術師」が実写化、そう発表された時、誰もが嫌な予感がしたはず。熱烈なファンの多い作品なだけに、その実写化に注がれる視線は厳しく、本作は見事にそのファンたちの逆鱗に触れたようだ。劇場公開前から荒れに荒れていた本作、はっきり言って前評判は最悪。自身も熱烈とまでは言わないが原作のファンであるのだが、ここまで前評判が酷いと、逆に期待せざるを得ない。一体どんなクソ映画なのかと。
しかし、蓋を開けてみれば拍子抜け。そこまで悪くないじゃないか。あくまで、0巻のオマケ映画としては。

まず、驚いたのは、そのCGの出来の良さ。最近の邦画はここまですごくなったんだ。冒頭のコーネロ戦からド派手な錬金術バトルを楽しめた。(この時点でエドにかなり違和感はあったが、わりと直に慣れていった。)そのバトルシーン以外にも人体錬成や真理の扉のシーン、アルの鎧など、そのどれもチープさはなく良かった。ロイの炎のCGにいたっては生々しいほどの出来だった。

また、感心したのは、ストーリーのまとめ方。原作でいえば、だいたい4巻までのキャラクター・ストーリーを中心に、オリジナル要素を加えつつ、上手くまとめ上げていた。原作既読のため、そのストーリーが面白かったのかは評価できないが、原作未読であったらわりと面白かったのではないだろうか。そもそも原作が超面白いわけだから。

なにより今回、1番叩かれているのは、そのキャストだろう。たしかに、酷い出演者はちらほらいる。ただ、中には素晴らしい配役もあり、大泉洋、松雪泰子、佐藤隆太あたりは良かったのではないか。中でも、大泉洋のショウ・タッカーは、その演技のおかげで原作以上に魅力的なキャラに仕上がっていた。それと、出番は少ないが夏菜のロス少尉も魅力的だった。
酷い方を挙げるとすれば、相変わらずディーン・フジオカの日本語演技は違和感あり、そのせいでキャラクターの魅力が大幅に減。そもそも、日本の話でもないのに、すべてを日本人が演じているということで茶番感が増している。

とまあ、キャスト以外はわりと良くできていたと思う。ただそれはハードルを下げまくって観たからそう感じるのであって、そもそもこの映画の存在価値は本来ないに等しい。原作があまりにも良く出来すぎているのだから、実写化という企画自体が間違っている。どう転んでも成功するはずない負け戦なのだ。だからこそ、むしろ「よく頑張った」と製作陣を褒めたい。
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