【大人だってぇ~♪】
基本的にはコミカルなんだけど、でも一歩間違うと「それってサイコだよね」っていうママのお話。
――折角家族でお出かけしようと約束していた日に限って仕事の予定が入ってしまうお父さん。
「だって、前から言ってたじゃない?」
「仕方ないんだ、会議が立てこんでる」
そう言ってそそくさと仕事に出かけてしまう。
呆然と見送る子供たちと、それ以上に明らかに不満なお母さん。
それでも「子供たちのため」と何とか気持ちを切り替えて遊園地に向かう。
そこにいたのは遊園地のマスコットキャラクターの「ベニー」
・・・の着ぐるみを着た「誰か」。
ベニーは嫌な顔ひとつせずに優しく包み込むように子供たちを迎え入れてくれる。
・・・当たり前だわな、マスコットだもん。
絵に描いたようにキャッキャとはしゃぐ子供たちを見ながら、物思いに耽るママ。
(そのモフモフの手・・・いいなぁ。私もあんな風に抱きしめられたい・・・)
その想いは段々抑えられなくなり、遂には驚きの行動に出てしまうママ・・・
って言うお話。
きっとね「パパが嫌いになったから」とか「今の生活が嫌になったから」とか、そういう理由ではないと思うんです。
だからこそ「怖い」。
考えてもみたら、パパさんってそこまで悪い人ではなかったと思うんだよね。
朝だってみんなの朝ごはんを作ってあげてたし、「食洗機壊れてたよ。修理頼んでおいて」って奥さんに言うってことは食洗機を使う→食器洗いまで気が向いている旦那さんでもある。
今日のドタキャンだってお仕事なんだし・・・。
そう考えると、決して「家族を省みない傲慢亭主」っていう印象は受けない(少なくとも映像からは)。
でも、ママはそんなパパを惜しげもなく切り捨ててまで「ベニー」を選ぶ。
それは「別の男」としてではなく、あくまでも「私を抱きしめてくれるモフモフのベニー」として。
スーツ(着ぐるみ)の中に誰が入っているか?なんてどうでもよくて・・・というか、中に人が入っているという事すらも彼女にとっては必要ない事実なんですね。
あくまでも「自分だけのモフモフ」であればそれでいいんだから。
だから、ベニーが喋ることも許さないし、何なら「中に人が入っているという現実」も自体も邪魔くさい。
そして、彼女はベニーを「完璧」にしてしまう・・・。
この時点で「パパ以外の男」が欲しかったわけではない事がハッキリしますし、なにより働き手のパパを追い出してまであの着ぐるみのベニーを選択したところで、全てが破綻に向かってまっしぐら(byカルカン)でしかないんですよね。
でも、そんな後先すらも考えずに「自分の欲望」だけを優先して、罪悪感や破滅的な自暴自棄感も微塵もなく、ただモフモフに包まれて眠りたい・・・・。
これは、「コメディ」っていうカテゴリーでコーティングされた、ゴリゴリのホラーやろ・・・。