蛸

アルジェの戦いの蛸のレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.4
アルジェリア独立戦争を描いた映画だけれど、アルジェリア民族解放戦線(FLN)とフランス軍に対する目線はあくまでもフラット。
FLNの女性が街で爆弾テロをしかける場面。カメラは狼狽える女性の表情を捉えるが、それと並行して、これから犠牲になるであろう人々の顔を提示していく。このシーンに限らず全編に渡ってとにかく人々の「顔」が印象的。表情の切り取り方に非常にドライなものが感じられる。
そして、ざらついた、無造作なカメラワークのモノクロ映像がこの映画を極めてドキュメンタリックなものにさせる瞬間がある。人々に対するまなざしが非常にジャーナリスティック。それだけに、ラストシーンで映される匿名の顔たちからはとてつもないパワーが感じられた。

と、このように書くと真面目で深刻な映画だと思われるかもしれない。しかし僕は、この映画はエンターテインメントしてもとてつもなく優れた映画だと思う。冒頭からやたらにテンポは良いし優れたロケーションも相まってかっこいい画も多い。それにフランス軍の指揮官である中佐のキャラもめちゃくちゃに立ってる。ディティールのリアリティは言わずもがな。
その意味で非常に稀有な作品だと思った。
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