【李香蘭の出世作だが】

1943年制作、モノクロ、満映と中華電映などの合作。東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵。　

李香蘭こと山口淑子の出世作として有名な映画である。何でもこの先DVDなどになる見込みもなく、上映自体が貴重なのだそうだ。フィルムもかなり傷んでおり、ところどころ声だけで全然画面が出ない（真っ黒）シーンもあったが、とにかく約２時間半の上映を楽しむことができた。　

内容は、アヘン戦争前夜の英国人の横暴とそれに抗して立ち上がる中国人たちの物語である。　

当時は撮影に使える西洋人俳優がいなかったらしく、英国人役は中国人がかつら（これだけならまだしもだが）と付け鼻で演じており、最初は冗談かと思ったけれどそうではないようで、ちょっと滑稽な感じがした。アジアには西洋人俳優などいなかった昔としては仕方がなかったのは分かるけどねえ。　　

山口淑子（李香蘭）特集

オープニングは楼門みたいなやつに監督や演者が描かれていて、カメラはその楼門を次々にくぐっていくという初めて見る感じ。

そのあと中国人がかつらや付け鼻で阿片窟を経営するイギリス人夫婦として出てきて、ぶっ飛んだね〜。もうコント番組じゃん😂

阿片窟に支払い猶予に来た男のエピソードで導入。中国版幕末太陽伝かと思いきや、友人あて手紙を書き、その友人が金持ってやって来て、阿片をやめさせようと店から連れ出すが、そこで分かれて、その友人は役人の家に行く……。

この友人が主人公林則徐。中国人をむしばみ、国を滅ぼす阿片とそれによって支配するイギリスを憎んでいる。

林則徐は役人に阿片憎しを伝え、意気投合。居候になるも、役人の娘がらみのいざこざで、役人の家を出る。

林則徐は紹介された家庭教師の家人から気に入られ、科挙に受かり役人になって、広末涼子似の娘と結婚。娘は阿片憎しの歌を歌い、それがきっかけ。その後役人の出世を重ね、阿片排除の政策を進めていく。

なかなか山口淑子が出て来ないんです。山口は初めの阿片窟の飴売り娘として、中盤以降に登場。なぜか冒頭の阿片漬けの金無心男がお気に入り。店といざこざあって2人で出奔。

最初の役人の娘は阿片離脱の丸薬を作り、人々を救おうとし、ラストでは民兵を組織、リーダーとなるも、阿片密輸騒動（多分阿片戦争）のなか討ち死に。

山口と夫婦となった男は丸薬のおかげで阿片から脱し、軍に入隊し、出世する。阿片密輸阻止で活躍。

ラストは林則徐夫婦の丸薬と民兵隊長として亡くなった娘の墓参り。

国立映画アーカイブ所蔵

修復したフィルムのデジタル上映

サウンドトラックは傷んでいなかったのか、音の途切れはないが、一部の画質の乱れと多数の黒く画面が無い部分あり。

満映