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メリー・ポピンズ リターンズのhonestakiのレビュー・感想・評価

3.6
分かっている。特にこの作品へのケチをつけてはいけない事を。
名作と比較するのは野暮だという事を。
それでも好きな映画のことならいくらでも話していたい。

楽しいよ、メリーの魔法は。でも、今作の魔法は弱かった。

前回初めてメリーがバンクス家に来たのは、子どもたちが作った暖炉で燃やされた求人を拾ったから。
貴方が求めのたよね?だから私は来たのよ、と。

帰ってきたメリー・ポピンズ、バンクス家で彼女を求めたのは誰か。
3名の子ども達?否。
前回同様、大人になったマイケルだったはずだ。
両親は既に他界。愛しい妻は3名の子どもを残して先立った。
金策を生業にしていた父親と違い、マイケルはロマンチストな画家のはずなのに、家族を養うために不慣れな銀行業務に就いている。
生まれ育った我が家は抵当に取られ、思い出と共に去らねばならない。
一週間後までに用意しなければならないお金の事で頭がいっぱいで、子ども達の事まで気が回らない。
誰よりも孤独なはずのマイケル。
マイケルの孤独を添え物にしたのは間違いだったと思う。
”子供心を忘れた大人”と一括りにしてはいけない。
だって、彼はメリーの魔法を知っている少年だったのだから。
12時の時報を遅らせるよりも、もっとマイケルの心に響く魔法があったら良かった。

メリー・ポピンズが好きな人は『ウォルト・ディズニーの約束』も観た方が良いです。
父と子の関係を深く描くべきだと感じるから。

前作が名作である理由はいくつもあるけれど、今作の魔法が弱いのはやっぱり音楽だろう。
歌詞は呪文、旋律は唱え方。
映画を観終わっても、チムチムチェリーと唱えていたはず。そして、その呪文を私達は知っている。
でも今作はそんな魔法が無いんだよね。
ひと匙の砂糖で苦い薬を変えてしまうような、辛い現実も何てことないって打ち破ってしまえるような呪文。
映画館を出た時に口ずさみたくなる魔法は、やっぱり前作の歌だった。

ミュージカル映画の幕開けは主役がバーン!と出るべきだろう、とか
バートが現役でびっくりした、とか
ジャック役の声が悪くて魅力がないのにハンサム扱い、とか
ジェーンがロングスカートじゃなくてパンツを履くようになっていた時代の変化、とか
ジュリー・アンドリュース愛について、とか

色々語りたい事が多すぎて困る。
リターンズを観るよりも、前作の名作であり傑作を観た方が良いです。DVDを貸すから。

でも今作で唯一成功しているのは、ジェーンとジャックの恋を盛り込んだ事。
恋は苦い薬を砂糖に変える魔法。異論なし!
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