異質なものに対する不安と貧しき心から見たキリストを照らし合わせ、混沌の社会の中で踠き苦しむ者への慈悲と殺を打たれた真実を描いた作品。
役者の演技は國村隼を筆頭に素晴らしい。
また脚本は極めて巧妙であり、何が真実で何が実態なのか、全てを疑う事が要求される作りだが、ルカによる福音書やキリストに関する数々の逸話を踏まえて考察すると解は存在すると思われる。
しかしこの作品の魅力は、ストーリーを超えたところにある。
山の中の男からは、都合の良いものしか見えず都合の悪い事は聞こえない者に「汝、隣人を愛せ。」と言えども、それが正しく届かない切なさを。
他者の言動に振り回されるジョングからは、自己の本質は独立した自我では無く、他者の主体性を内包したものであるという視点を感じた。