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アリー/ スター誕生のdm10foreverのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.3
【諸刃の剣】

今年は「グレイテストショーマン」「ボヘミアンラプソディ」と『音楽』にスポットを当てた大作がいずれも当たった年だったと思う。去年の「LALALAND」も入れれば、決してまぐれではないんだろうなという気もする。
やっぱりスクリーンで物語に没頭しているところで一気に心を鷲掴みにするようなメロディーがバ~ン!と流れたら、そりゃボルテージも一気に上がりますって感じですよね。

で、やっぱりこの作品も「歌」の持つエネルギーが満ち溢れた作品となっていて、それだけでも劇場鑑賞する理由になるくらいの一本だと思います。

―――大スターのジャクソン・メイン(ブラッドリー・クーパー)はツアーの移動中に偶然立ち寄ったバーで生き生きと歌う一人の女性に心を奪われる。彼女の名はアリー(レディ・ガガ)。彼女はまさに神から与えられたかのような天賦の才能を持ちながら、自らに自信が持てず、週末のバーでドラァグクィーン達に交じって思いっきり歌うことに小さな幸せを感じていました。
そんな彼女に「才能」を感じたジャックは速攻で彼女を誘い出し、彼女の心の奥にいる本当の彼女に話しかけます。

(歌いたい。でも私は鼻が大きいから大成しないって・・・)

彼女の本心に触れたジャックは彼女を自分のライブに誘います。もちろん歌手として。
急にそんなこと言われても仕事だってあるし・・・
しかし、彼女の心の中には消しても消えない炎が確かに燃え上がっていました・・・。

そのライブシーンで歌う「Shallow」はとても印象的な一曲。

(いつまでも浅瀬に留まっていても何も変わらない。もっと遠くまで・・・)

それはこの映画のテーマそのもの。二人の関係や自分自身が殻を破っていく姿に重ね合わせた歌だった。
初めて大観衆の前に立って歌うアリーは、俯いたり目を隠してみたり顔が引きつったり・・・とにかく自信がないような歌い方だった、しかし、曲が進むにつれジャックのリードにも助けられ、次第に彼女の顔つきが変わっていく。この曲を歌いきった事で彼女の人生が大きく動き出したとも言えるくらいいいシーンでした。

一方のジャックはまさに「破滅型の天才肌ミュージシャン」。
どこに行っても大スターのジャックだったが、片耳の聴力が徐々に失われていく現実が受け入れられずに虚勢を張っていた。
アリーと初めて逢ったきっかけも、彼女と語り合ったときも、彼は常にお酒と共にいた。
アリーとのセッションをすることで彼女との愛も深まり、惰性になりつつあった音楽活動にも再び力がみなぎってきた。全ては順風満帆に見えた。
しかし、彼女の才能は本人達が思っているようなレベルではなく、更に高見へと登っていく宿命にあった。
次第に彼女への嫉妬が募る。さらに悪化する聴力・・・うまくいかない自分自身に負け、遂には酒とドラッグで身を滅ぼしてしまう。
ジャックは「最愛の女性」と同時に「自分の才能すらも凌駕する天才」を見つけてしまった。そしてそのどちらもが「アリー」であるということを受け入れる現実。

アリーへの愛の深さ、自分自身の弱さ、そして認めたいアリーの才能、美しさ・・・
全てはもはや彼の心のキャパシティを超えてしまっていた。

ある意味では「行き着く果て」とも言うべきラスト。
アリーの歌う「アイル・ネバー・ラブ・アゲイン」は切なかった。残るわ~。

ストーリーとしては案外定型的で、先が読める内容ではあったけど、「アリー(として)の歌唱力」と、想定外の「ガガの演技力」が作品の評価をググッと上げた感はある。
これは劇場で体感するべき1本だと思います。
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