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ラサへの歩き方 祈りの2400kmのKUBOのレビュー・感想・評価

4.0
なんか、すごいものを見てしまったなぁ。

「ムヴィオラ」さまからいただいた映画『ラサへの歩き方 祈りの2400km』のDVDを鑑賞。

なんか、ヘッドスライディングみたいにうつ伏せに滑り込んで、地面に這いつくばって祈りながら前に進んでる⁈ 何だ、これは?

どうやらこれは「五体投地」というもので、チベットの人が聖地ラマを目指す時に行う最も丁寧な礼拝の方法だと言うのだが、

え? こんなやり方でずっと行くの? とても信じられない。

それも、タイトルにもあるように、目指す聖地ラマとカイラス山までは2400キロ! それって北海道から九州までの距離とほぼ同じ! 嘘でしょ⁈

本作はドキュメンタリーではなくて一応フィクションと言うことだが、脚本はなく、実際にチベットの村の人たちに本当にラマまで五体投地で巡礼をしてもらったものを映画にしたものだから、ほぼドキュメンタリーのようなもの。

1年をかけての巡礼だからテントや食料なども運ぶんだけど、それがトラックじゃなくてトラクター???

女性の巡礼者が腹痛を訴える。陣痛? 妊婦にあんなことさせてたのか!

女性は巡礼の途中で出産までしちゃうのだが、これも撮影中に実際に起こったことだと言うのだから驚きだ!

道凍ってても、道が冠水してても、地面に身体を平伏しながら一行は聖地へと進み続ける。

私も仏教徒で、日本ではある程度の修行と呼べるようなことをした経験もあるのだが、本作の中で見られるような数千キロの距離を五体投地で巡礼するなど、到底できるものではない。

それも特別なことではなくて、チベットでは広く行われているというのだから、もはや驚きを通り越す。

ひたすら聖地を目指し行く道の、周りの山々のなんと美しいことか! このチベットの景色を見るだけでも価値があるほど美しい。

見終わって、宗教って何だろうと改めて思った。これほどチベットの人たちが心の拠り所としているチベット仏教。だが中国に支配された今、その精神的支柱であるダライ・ラマの写真を持っているだけで違法とされ弾圧される。

監督のチャン・ヤンは北京生まれで、本作に政治的意図はないとしているが、やはりチベットと中国の問題を考えてはしまう。

ともかく内容も映像も、他に例のない、類稀なる作品。一見の価値あり。
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