ボブおじさん

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のボブおじさんのレビュー・感想・評価

3.9
今週末公開の「オッペンハイマー」で見事アカデミー賞主演男優賞を受賞したキリアン・マーフィ主演の史実を元にした戦争サスペンス。

調べて見たらキリアン・マーフィの出演映画は、これまで9本見ていた。だが彼については存在こそ知っていたが残念ながら大きなインパクトを受けることもなく印象は薄い。

クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」3部作や「ダンケルク」にも出ていたらしいが、正直〝え⁈どの役だったっけ?〟という印象😅

そんな訳で「オッペンハイマー」鑑賞の前に改めてキリアン・マーフィという役者に注目して本作を見ることとした。

第二次世界大戦中、ユダヤ人大量虐殺の実権を握り、その冷酷さから〝金髪の野獣〟〝プラハの屠殺者〟と呼ばれたナチス親衛隊の大物幹部ラインハルト・ハイドリヒを暗殺した〝エンスラポイド作戦〟を描いており、マーフィはこの冷酷極まりない男を暗殺すべく送り込まれた憂国の志士の1人という役どころ。

ちなみに歴史上、唯一成功したとされている、このナチス高官の暗殺事件は、本作を含めて少なくとも4度は映画化されており歴史的にも衝撃的な事件だったことが伺える。

私もこれまでにフリッツ・ラングの「死刑執行人もまた死す」とこの映画の翌年に作られた「ナチス第三の男」を見ていたので事件のあらましは知っている。ちなみに〝第三の男〟とは言うまでもなくヒトラー、ヒムラーに次ぐという意味だ。

今回改めてキリアン・マーフィという役者をまじまじと見ることになったが、整った顔立ちながら痩せこけた頬と窪んだ目はいわゆるヒーローの顔ではない。

そのせいかどこか内向的で時に病的にすら見えることのある彼が、多くの作品で見ていながら印象が薄いのも理解できた。

その一方で祖国の運命を握る重要な任務を果たそうとする男の緊張感と責任感を静かな表情の中に力強く表すなど、性格俳優としての技量の高さも垣間見ることができ、その積み重ねがノーラン監督の信頼にも繋がったのかなと推測できた。

映画としては史実を元にしている為に結果はわかっていたが、それでもスリリングな展開には引き込まれた。その後の更なる悲劇も含めて過去の戦争を描いた作品だが、戦争の恐ろしさと愚かさを知る為にも今こそ見るべき映画なのかもしれない😢