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RAW〜少女のめざめ〜のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.0
【『反撥』のショットは劇薬だ】
2月は3本もの「めざめ」映画が公開される。その第一弾『RAW 〜少女のめざめ〜』を観てきた。カンヌ国際映画祭で失禁者続出したらしいゲテモノ映画だ。

町山智浩の解説曰く、ロマン・ポランスキーの『反撥』に近い純粋無垢な少女が大人の階段を昇る際の悪夢を描いているらしい。

実際に観てみたところ、『反撥』というなのウォッカをストレートで1リットル飲む様な毒薬。吐き気が出る程の傑作であった。

神童だと言われ、親から過保護に育てられた少女が観る獣医学校の洗礼。割かと日本だけの話かと思っていた、先輩の後輩イジメ。イジメられたかつての後輩が上級生になり、あの頃の恨みを下級生にぶつける構図はフランスにもあった。

暴力、暴力、暴力の応酬。ベジタリアンにも関わらず、ウサギの肝を食わせられる鬼畜プレイ、とにかく断食して観て正解だと思う程に不快指数が溜まります。

ただこの映画、実は物語に強固な神話性を帯びている。それ故に、自分もかつて乗り越えてきた子どもと大人の狭間にある葛藤を思い出す。だから観終わった後、良い映画を観たという満足感を得る。これは例えるならば一本満足バー以上だ。

特に姉という存在の描き方が秀逸。
姉は1年早く獣医学校に入っている。妹は大学デビューの不安を優しかった姉に癒してもらおうとする。しかし、姉は変わり果ててしまった。これは、大人の世界を知った者とこれから知る者の対比として非常に重要だ。大人の世界を知った時に振り返る過去の自分。記憶から消し去りたい程ダサい自分。しかし、目の前にはダサい自分を思い出させる存在としての妹がいる。妹は、汚い大人の世界を拒絶しようとするが、強力な引力に引き込まれる。そして自分を殺すかのように姉に食ってかかる。

これは、思春期〜大人になって年数経てない頃の自己嫌悪を見事描ききった作品だった。
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