Makiko

浮雲のMakikoのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.4
私の周りでコレ苦手!って言う人が多かったので、どれどれ……と観てみたら、なるほど……たしかにコレは2時間が妙に長く感じる。
自分が執着心の強い性格ゆえ、本作の高峰秀子の役には共感できるかもーなど軽く思って見ていたが、そうでもなかった。しかし高峰秀子本人が嫌いそうなこの、ひどくジメジメした女の役を完璧に演じ切っていることに圧倒された。
成瀬映画の例に漏れず、男性キャラクターはとことんクズに描かれる。成瀬映画しか見てないと森雅之とか上原謙とか嫌いになりそう(笑)

前半のシーンで酒に酔った森雅之が高峰秀子に、まあ俺ら不倫関係だけど仲良くしていようぜ〜的なノリで話しかけるのに対し高峰が「気持ち悪い……」と返すのに不謹慎ながら笑ってしまった。それゆえ、終盤に二人で屋久島まで行ってから森が「女なんていくらでもいるからな」と冗談を言って、高峰もフッと笑って何か言うシーンで、ようやく二人は落とし所を見出せたのだろうなと安心し……かけたのもつかの間、あのラストなので膝から崩れ落ちた。

改めて成瀬作品のフラッシュバックの表現が好きだなと思った。映画的というよりは、フラッシュバックってリアルにこんな感じだよな〜というような。場面転換の挿入なしに、いきなりパッと過去のシーンが始まる。その場で喋っている他者の声は音声として耳に入ってきているのだけど、本人にしか見えていない映像がある。義兄との会話シーンなどまさにそんな感じで、義兄がリアルタイムで話す声が流れる中、画面にはゆき子(高峰)が犯される映像が映し出されるので生々しいしキツイ。
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