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浮雲のQMのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.5
原作の朗読を聞いて興味を持ったので。

原作ではゆき子と冨岡の関係を語る上で加納は重要人物だったけど映画では完全に脇役に。同じくダラットの地も。(自分が行った時は霧っぽい素朴な町だったけど、原作ではまさに楽園で、日本の戦況が悪化してく中でも登場人物達は恋愛などを楽しみ、帰国して浦島太郎状態となり思い出を引きずりながら戦後の混沌とした世の中を生きる)

若干文脈伝わり切ってないのではと心配するほどかなりテンポ良く話が進んでいく。原作は男女の心の機微だけと言っていいほどそれ中心なので本当に長く感じるし本で読んでたらねちっこ過ぎて嫌になってたと思う。確かに印象的なシーンはカバーされてるけど、当時まだ存在が一般に知られてなかった屋久島への道中ドヴォルザークの「新世界」を聴くところはぜひ映画化して欲しかったな。劇中音楽と合わなすぎか。

冨岡を取り巻く女は皆それぞれ壮絶な最期だったわけだけど映画では結構あっさり死んでいった。特にゆき子の死に方は純朴だった女が執着の塊みたいな人間に変わっていったのが伝わるものだっただけに綺麗に死に過ぎてちょっと話全体が陳腐化されたようにさえ感じた。しかし原作でも映画でも冨岡という男の魅力がまったくわからない。そういう意味で良いキャスティングなのかも?もう少しスナフキン的な緩さと知性を持ち合わせた男の印象があったけど。おせい役も色気と強情さが絶妙。ゆき子の人間が変わってく様子を演じ切った高峰秀子すごい。
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