けーはち

浮雲のけーはちのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
3.5
仏印ベトナム赴任中に関係を持った男女は戦後東京で再会。義兄に手を出され実家から逃げて職業婦人として自活するものの刺激と男を求める女・高峰秀子と、官吏から転身し商才はないが次々若い女に目移りするダメなモテ男・森雅之の、熱がなくなってもずるずると爛れた共依存関係が続くロマンスを描く破滅的なメロドラマ。ラストシーンが屋久島(当時の沖縄は米占領下なので、国境付近最果ての島)なのはいかにも都落ち・島流しを極めた流離譚ぶりである。2人の正統派昭和美形ぶりで画が保つし、華やかな戦中から混乱の戦後へのコントラスト、流行歌謡や外来文化の象徴と言えるクリスマスや労働争議等が時代を彩り、はたまた怪しげな新興宗教の怪僧としてボロ儲けしているヒロインの義兄など、戦後をサバイブする庶民の逞しさが気塞ぎな話の中に光る。劇伴ではメインテーマで中近東の音階が鳴り安住の地なきジプシーの如き哀愁を漂わせる。